スズキは軽自動車とバイクで世界的に有名で、インドなどの発展途上国を中心に大きなシェアを誇っています。海外の生産拠点はほとんどが発展途上国ですが、ヨーロッパの工場はハンガリーのみということが注目されます。
スズキはなぜハンガリーを生産拠点として選んだのでしょうか?

エステルゴム市にあるマジャールスズキの工場。出典:Suzuki.hu


日本企業のハンガリーへの投資環境について

1980年代後半におけるソ連の弱体化および中東欧諸国における民主化の流れの中、ハンガリーは1989年、社会主義体制を廃止し、政治・経済を自由化しました。特に経済の自由化に伴い、ハンガリーという未開拓の市場に多くの外資系企業(主にアメリカ、西欧)が進出しはじめました。

ハンガリーは社会主義国家だった時、100%外国資本の企業は認められておらず、外資の資本比率は最大49%に制限されていました。現在のように誰でも簡単に企業を設立できる環境ではありませんでした。もちろん、スズキ社との交渉も極秘で行われました。

しかし、ハンガリーは社会主義圏ではあったものの、ソ連など他の社会主義国家とは異なり、1970年代から生活面ではある程度の自由がありました。政治的な自由はなかった反面、政府は国民を満足させるために福祉政策に力を入れていました。ただ、実施された福祉政策に見合った経済力がなかったため1973年以降、外国の銀行から多額のローンをすることになりました。外国の銀行のほとんどが日本の銀行でした。1980年代半ばにはハンガリーの国債の半分を日本の銀行が持っていた時期もありました。ハンガリーにとって日本は社会主義時代から重要なパートナーだったことがこの事実から窺えます。

日本企業は欧米の企業と比べ、ビジネスの決断するまでに大変時間がかかると言われています。また、リスク回避の意識も高いです。「そこまで調べるか」というまで情報を収集し、それぞれの担当のレベルで会議を重ね、慎重に決断までもっていくのが一般的です。特にリスクが伴う投資になる場合はなおさらです。

ではなぜ、スズキは自由化をして間もないハンガリーに投資を決めて、法人設立からたった1年で生産を開始できたのでしょうか。そもそもなぜハンガリーが選ばれたのでしょうか。


マジャールスズキの設立背景について

日本企業の中ではスズキがハンガリー進出の象徴的な存在でした。スズキは1991年にハンガリー法人「マジャールスズキ社」(「ハンガリースズキ」という意味)を設立。ブダペストから北西40kmのドナウ川沿いの町エステルゴム(Esztergom)で工場の建設に取り掛かりました。建設は順調に進み、生産は翌1992年に開始しました。マジャール・スズキ社はオペル社(当時GMグループ傘下)と並び、ハンガリー初の自動車製造企業となりました。

実は、ハンガリー政府とスズキの交渉は1985年ごろから始まっていたことがあります。スズキが初めてハンガリーに関心を示したのは1984年12月です。元々スズキに声をかけたのはハンガリーではなく、ブルガリアでした。ブルガリア政府はスズキの製造工場を誘致しようとしましたが、スズキはブルガリアでの可能性を精査した結果、ハンガリーの方が投資先として魅力的だと判断したのです。

マジャールスズキ1992年8月28日
マジャールスズキで最初に生産された車両「スイフト」の祝賀会。(1992年8月28日)
出典:InfoEsztergom.hu


マジャールスズキはハンガリー初の日系企業であったのか?

ハンガリーでの自動車工場の設立を検討した日本企業は、スズキが初めてだった訳ではありません。ハンガリー政府は1967年にトヨタと交渉したという噂がありました。1969年には日産自動車の代表団がハンガリーを視察し、西部のジェール市の400ヘクタールの土地に工場設立を検討していました。日産の計画はソ連からの圧力で中止になりました。1994年、日産が検討した土地にアウディが工場を建設しました。

このように長い経済交流の末、自由化直後のハンガリーで日本企業による大型投資、即ちスズキ工場の設立が実現したのです。「やっと」という感覚でした。1985年にスタートし、最終的に話がまとまるまで6年ほどかかりました。その経過をみると、ハンガリーの経済自由化1989年、マジャールスズキ社設立1991年、生産開始1992年というタイムラインも納得していただけるでしょう。


スズキがハンガリーを選んだ理由について

スズキがハンガリーに進出した理由は何だったのでしょうか。「ハンガリー政府の視点」と「スズキ社の視点」で考察しましょう。

まず、「ハンガリー政府の視点」からすると以下の誘致理由が考えられます。

  1. 外国資本の流入によって、自由化後壊滅的な状態にあったハンガリー経済を盛り上げること。
  2. ハンガリーで乗用車を製造する産業を興せること。
  3. 工場の設立で雇用を創出できること。エステルゴム市周辺は元々鉱山地帯で、鉱業の衰退で失業率が高くなっていました。

一方、スズキはなぜハンガリーを進出先として選んだのでしょうか。

1. ハンガリーや旧社会主義諸国の市場性を重視したこと。

スズキは安価で性能が高い車で有名で、経済的にあまり発展していないハンガリーや旧社会主義諸国はスズキにとって有望な市場に見えたでしょう。実際、スズキ工場稼働当初はハンガリーでの国内販売がほとんどでした。

2. 人材が豊富なこと。

ハンガリーは社会主義時代に高水準の教育制度を維持。特に製造業に特化した技術を持った人材が多くいました。社会主義時代には乗用車を生産していませんでしたが、ハンガリー製のバス「イカルス」は社会主義諸国や発展途上国でよく売れていました。バス製造で経験を積んできた熟練労働者がハンガリーに大勢おり、その人材を乗用車製造工場で採用できる見込みがありました。

3. サプライヤーが見つかる可能性があること。

上述の通り、ハンガリーはバスを製造していました。さらに、ソ連から乗用車を輸入する代わりに、1967年からかなりの種類の自動車部品をソ連の自動車産業に提供してきたので、車の部品製造会社が多くありました。最初からスズキの厳しい基準に適合するハンガリーの会社は決して多くありませんでしたが、その数はだんだんと増えていきました。

4. スズキは工場建設に関して好条件で融資を受けられたこと。

建設費用163億フォリントに対し、スズキは110億フォリントのローンを組み、そのうち91億フォリントを国際協力銀行が、11億フォリントを世界銀行が融資しました。しかも国際協力銀行の91億フォリントのローンをハンガリー中央銀行が担保しました。当時、この金額は非常に高いとの認識だったので、国会の承認が必要でした。

5. ハンガリーに投資した日系企業の先例があること。

日本企業がハンガリーに初めて出資したのは1979年です。ハンガリーの中欧国際銀行(Central European International Bank)の設立者に日本の太陽神戸銀行と長期信用銀行が加わっていました。製造業では1984、古河電工とハンガリー企業Pannonplastによる合弁会社が初め設立されました。これらの先例はハンガリーが安全だという印象をスズキに与えたのでしょう。

6. 西への拡大の可能性があること。

当初、スズキの進出理由は、旧社会主義諸国に安い車を提供することでした。しかし、ハンガリーの立地条件は西側諸国も視野に入るのでそれも重大要素だったと考えられます。


マジャールスズキの今後は?

スズキはハンガリーでの生産を始めてから、ハンガリー市場で絶大なシェアを有しています。

最も登録車両台数が多かったのは2003年。39,443台のスズキ車がハンガリーで新規登録されました。2009年~2015年は登録台数が減りましたが、新車ビターラのハンガリー生産が始まったのをきっかけに登録台は回復し出しました。その結果、2016~2022年、スズキブランドは7年連続ハンガリーでマーケットリーダーの座についています。

マジャールスズキの会社沿革。出典:Suzuki.hu

EUにおける自動車排気ガス規制、EV化の流れ等によって、今後EUの自動車市場は大きく変化するとされています。特にハンガリーは各自動車製造会社がEV生産拠点を持ち、EV用バッテリーメーカー大手各社も進出を果たしています。目下、スズキのEV車販売は未定ですが、2023年に総額93億フォリント(約38億円)の新規投資を発表する等ハンガリーで更なる拡大を目指す姿勢を取っています。


出典


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ハンガリーでビジネスを始めるにあたり、最初のステップとなるのは会社設立です。個人による起業であっても、ハンガリーに進出を計画する企業であってもこのプロセスは同じです。

会社を設立する際、先ずは目的に合った会社形態を決定する必要があります。ハンガリーには以下の主な会社形態が存在します。(個人事業主などは対象外です。)

※以下はハンガリーの会社形態を示しています。翻訳として日本のものと同じ名称を使っていますが、完全に別物となっています。

ハンガリーにおける会社設立


合資会社「Bt.」

合資会社(Betéti társaság、略:Bt.)は設立に最低2名、主な責任を持つ「メインメンバー」と責任が軽い「サブメンバー」が必要で、会社の活動においてオーナーが個人として無限の責任を持っています。上の3形態の中で合資会社の設立は最も費用が低いですが、小規模会社がほとんどです。企業相手にビジネスを考えている場合は、あまりお勧めしません。また、無限責任を取ることが基本条件ですので、ハンガリーまたはEUで資産を多く持たない外国人が合資会社を設立できたとしても、移民局から滞在許可が下りないリスクがあります。


有限責任会社「Kft.」

有限責任会社(Korlátolt felelősségű társaság、略:Kft.)は、会社サイズと関係なくハンガリーで最もポピュラーな会社形態です。名称の通り、会社のオーナーの責任は有限で、資本金にのみ及びます。有限責任会社の設立には資本金が最低300万フォリント(最低30%または90万フォリントは現金であること)が必要ですので、合資会社と比較してコストはかかります。


株式会社「Rt., Zrt., Nyrt.」

日本と違い、ハンガリーには株式会社(Részvénytársaság、略:Rt., Zrt., Nyrt.)はそれほど多くありません。ハンガリーで「株式会社」は「大企業」というイメージが強いです。株式会社の設立コストが最も高く、資本金は最低500万フォリントが条件です。株式会社には株式総会と役員会という組織が必要になります。株式会社の株主の責任範囲は有限責任会社と同じく資本金に限られています。株式会社では株式の譲渡などが可能なので、株式の所有構成は変更がしやすいです。株式による配当の支払いもできます。事業内容によっては、株式会社の会社形態が義務付けられることもあります。


ハンガリーにおける会社設立プロセス

どちらの会社形態を選ぶにしてもハンガリーで会社を設立するには、必ずハンガリーで登録されている弁護士を通さなければなりません。個人事務所の弁護士から大きな国際的な弁護士事務まで、選択肢は色々です。大きな違いは、英語での言語対応ができるかと言うことと料金です。料金が安い弁護士はハンガリー語以外で対応できない可能性がある一方、英語対応が可能な弁護士事務所は料金が高くなります。

弁護士を決めたら、弁護士との契約を結びます。ハンガリーの法人名、会社形態、資本金、会社の事業内容、オーナーや法人の代表、会計会社や本社所在地を決めないといけません。会社設立に必要な書類の作成に当たり、幾つかの書類が求められます。例えば、会社のオーナーが日本にある親会社の場合、日本の親会社の設立証明書の正式なハンガリー語訳と外務省が発行するアポストロフィーを提出しなければなりません。

ハンガリーに駐在員がまだいない段階で会社を設立する場合は、ハンガリーに登録された住所を持つデリバリー・エージェントを任命する必要があります。デリバリー・エージェントが会社設立関係で送られる正式文書を受け取り、書類を転送します。

書類が提出されたら、だいたい1週間ぐらいで会社の仮登録が終了します。オンライン上では会社が登録されますので、会社に関するさらなる手続きに移ることができます。

ハンガリーにおける会社設立

法人用銀行口座として、ハンガリーで登録された銀行での口座開設が次のステップです。開設には、法人の登記簿や定款、法人代表者の署名見本、仮登録が済んでいることを示すE-aktaと呼ばれるデジタル書類が必要です。法人代表者が銀行に赴き、口座を開設します。

仮登録から約1~2ヶ月後に法人の本登録が終了します。この後にハンガリーでのビジネスを開始することができます。

会社設立の実質的な手続きは弁護士が行います。弁護士や会計事務所の選択、デリバリー・エージェント業務、銀行口座開設、オフィス物件探し、ITシステム業者、人材紹介会社探しはハンガリーのこれらのパートナー探しをサポートするような信頼できるコンサルがいると安心です。


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弊社では、土地の選択や市場調査などのコンサルティング業務に加え、信頼できるパートナーの紹介や上記の業務をサポートしております。また、会社設立後に必要となる駐在員の就労許可の申請、免許切り替え、個人用銀行口座開設、アパート探しなどの駐在員やご家族向けのサービスで、皆様のハンガリーでの駐在生活をより安心したものに。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。


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海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にハンガリーのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

ハンガリー市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


ハンガリーの投資環境について

中東欧の真ん中に位置するハンガリーは、中規模の面積(93,032 km²)を有するEU加盟国で、人口は1,000万人弱です。非ユーロ圏で、自国通貨ハンガリー・フォリントが使われています。

ハンガリーの政治体制は、1989年に社会主義から民主主義に転換しました。1990年に最初の多党選挙が行われ、自由市場経済制度が採用されました。1999年にNATO(北大西洋条約機構)、2004年にEUに加盟しました。現与党は選挙で連続4回多数議席を獲得し、長期政権を維持しています。

現在、ハンガリーの市場経済はかなり発展しています。国民1人当たりの収入はEU28カ国平均の約3分の2です。インフラは整備されており、高速道路の長さは合計1,884 kmで中欧では最長の交通網を誇っています。

主な輸出製品は、電子機器、自動車、医薬品などです。食品ではワイン、フォアグラ、鴨肉などが有名です。主な輸出先としてはドイツや他のEU加盟国が挙げられます。

政府は投資企業を積極的に支援しており、特に製造業の強化に力を入れています。現政権の最大の目的は、EUの開発資金とユニークな経済政策を活かすことによって、個人消費や経済成長を促すことです。

ハンガリー経済の原動力は自動車産業になっています。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BMWの大規模自動車工場が国内に4か所あります。法人税が、現在EU圏内で最も低い9%ということが背景にあるとみられます。

近年、政府の手厚い支援もあり、EV(電気自動車)用バッテリー製造関連企業の進出が目立っています(詳しくは、こちらのブログ記事をご参照ください)。バッテリー関連では特に韓国企業と中国企業の数が急増していますが、日系のバッテリーサプライヤーも複数社がハンガリーを生産拠点としています。ハンガリーのアウディ、メルセデスベンツ、BMWの自動車工場のでもEVの製造が予定されています。今後、ハンガリーはヨーロッパのEV産業の中心になると想定されています。

ハンガリーは近年、EUとの関係が緊迫し、その独特な外交政策のためEUの中の「異端児」とみられています。EUから離脱するのではないかと懸念されることもあります。しかし、ハンガリー経済はEUの経済と密接に関係していることを考えるとEU離脱が非現実的なのは明らかです。

課題としては、少子化や人材の海外流出による労働力不足、輸出への依存、ロシア産エネルギーへの依存、EUとの政治的亀裂が挙げられます。


ハンガリーに進出している代表的な日系企業

ハンガリーでは、体制転換直後から日系企業が進出しています。最初の大型投資は1991年のスズキ自動車で、それに続き2000年代前半まで同社のサプライヤーなど多くの日系企業がハンガリーに進出しました。現在ハンガリーでは、182社(出典:2022年「海外進出日系企業拠点数調査」)の日系企業が活動しており、うち54社が製造業です。ハンガリーの代表的な日系企業は下記です。

在ハンガリー駐在員の方への便利な情報

ハンガリーには現在1,975名(出典:2022年「海外在留邦人数調査統計」)の日本人が在留しています。日本人向けのインフラが整っており、首都ブダペストにジェトロ(日本貿易振興機構)の事務所、国際交流基金の文化センター、日本人学校などがあります。日本食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で入手でき、ブダペストを中心に日本食レストランも多いです。ハンガリーには親日的な人が多く、日本語の通訳ができる現地の人材の獲得は容易です。
ブダペストの一般生活費は東京より18.5%(家賃込み)安く、特に食品、光熱費などが安価です。1人用のアパートの家賃はブダペスト中心部では約8万円、郊外では6万円程度になっています。(出典:Numbeo.com

現地通貨は「フォリント」で、為替レートは「1 円= 約2.45 フォリント」(2023年8月現在)となっています。全国的に両替所が多く、日本円の両替にも対応しています。

まとめ

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランブダペストを中心に多くあり
日本人学校ブダペストにあり
JETRO事務所ブダペストにあり
国際交流基金文化センターブダペストにあり
滞在日本人数1,975人(2022年現在)
生活費(ブダペスト)(東京より)18.5%(家賃込み)安い


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弊社は複数のハンガリー現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得することができます。また、日本企業のハンガリー進出に関して豊富な実績があります。

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「ハンガリーへの移住」や「ハンガリーでの就労」をキーワードで調べると、ハンガリーは外国人や移民に対して厳しいというニュースが目に入ってきます。ハンガリーで就労するための許可証を取得するのは本当に難しいのでしょうか。滞在許可証申請について知っておきたいことを簡単に説明いたします。


ハンガリーに日本人が入国するにはビザが必要なのか?

日本のパスポート保持者はハンガリーに行く前に事前にビザの申請をする必要はありません。

まず、日本とハンガリーはビザ免除の協定を結んでいます。日本のパスポート保持者はハンガリーに行く前に事前にビザの申請をする必要はありません。ハンガリーに入国した時点から3か月間はビザなしで旅行者としてハンガリーに滞在できます。シェンゲン域内の初めての空港でパスポートにスタンプが捺されるだけです。スタンプの日付から3か月はビザや許可証の免除期間です。
3か月間は観光やビジネスでの出張には十分ですが、3か月を超えてハンガリーに滞在する予定の方は学生ビザや就労許可証などを申請しないといけません。


ハンガリーにおける長期的滞在許可の種類とは?

ハンガリーの滞在許可証に様々な種類がありますので、ご自分の目的に合ったものを確認しましょう。

※この記事には学生ビザ、ワーキングホリデービザ、求職ビザなどは取り上げていません。


ハンガリーでの就労許可証について

90日以内の仕事やビジネスでハンガリーに滞在される方の場合は、「就労許可証」が必要になります。就労許可証にも2種類があり、どこから給与が払われるのか、雇用形態や業務内容によって許可証の種類が変わります。

就労許可証の1つは「ICT就労許可証」と呼ばれます。ICT許可は「企業内での異動」を意味しています。つまり、日本の本社が赴任する社員を本社から外さず、ハンガリーの子会社か支店で働くよう異動させた場合に当たります。申請者は日本の親会社と雇用関係にあり、転勤命令を受けているのが申請条件になっています。給与は日本の親会社から受け取ります。
ICT許可の期限は最長で3年間で、延長はできないので、滞在期間は3年間を上回らないよう注意しましょう。

但し、ICT許可が切れる前にもう1つの就労許可証、ハンガリーにある子会社と雇用契約を結ぶ「就労許可証」の申請は可能です。一方、ハンガリーにある子会社(ハンガリーで設立された法人)とも雇用関係を結ぶ場合はまた別の種類の「就労許可証」が必要です。この就労許可証の期限は最長2年間ですが、こちらはICT許可と違い、期限が切れる前に延長がOKです。
駐在員の方にご家族が同伴される場合は、ご家族には「配偶者ビザ」を取得します。


ハンガリーでの滞在許可証の申請に必要なこと

ハンガリーで滞在許可を申請するには提出しないといけない書類が多くあります。弊社の専用シートにお客様の個人情報や職務などをご記入いただくだけで、申請に必要な書類を全て用意いたします。

滞在先住所を決めていただく

申請時にハンガリーでの滞在先住所が決まっていなければなりません。つまり、申請の前にハンガリーで家探しをし、アパートの賃貸契約を結ぶ必要があります。弊社は家探しもサポートしています。

ハンガリーで滞在許可証の申請のために滞在先住所が決まっていなければなりません。

最終学歴(卒業証明書)の提出

申請書類には赴任者がどのような職務を担当するのかを記載します。日本とは少し異なり、職務に対応する学部を出ていると言うことを証明しなければなりません。このために最終学歴証明書を提出いただき、ハンガリーの国立翻訳事務所で翻訳をしてもらいます。例えば、大学の専攻は法学だったのに申請書類には工場長と記載されていると、つじつまが合わないことになります。日本では大学の専攻と異なる業務を担当するのはよくありますが、ハンガリーではかなり珍しいです。弊社ではお客様と相談して、労働局が納得してくれるような申請書を作成しています。

ハンガリーでの滞在をカバーする民間の医療保険

ハンガリーの法人と雇用契約を結ぶ駐在員は自動的にハンガリーの社会保険制度に加入可能です。日・ハンガリー社会保障協定で加入の免除を申請することもできます。ICT就労許可証の場合は、まず社会保険制度に入れないことから、前もってシェンゲン地域で全ての項目を保証する民間の保険に加入していただく必要があります。申請時に保険証券を提示します。


これぐらいのことであれば申請なんて大丈夫だ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ハンガリーの労働局や移民局は決して親切でフレンドリーな機関ではありません。ホームページは分かりにくく、予約はできず、コールセンターの電話が繋がらず、実際に移民局に行けば何時間も待たされる、挙句の果てに書類の不備を指摘された...
また一からやり直し...

ハンガリーの滞在許可証の申請プロセスは時間と労力がかなりかかってしまいます...

こうなると何度も移民局に足を運ぶこととなり、相当な時間と労力が無駄になってしまいます。未提出の書類や不備があれば、追加で書類を用意しなければならず、許可証発行までの時間がさらに伸びてしまいます。一方、必要な書類や手続きを知っていれば、移民局に行くのは1回だけで済みます。


ですので、弊社にお任せください!

弊社は駐在員の方やご家族の就労許可証・滞在許可の取得、アパート探しなどを全面サポートするだけではなく移民局に同行や移民局とのやり取りにも対応しています。手続きは我々にお任せください!
弊社では滞在許可関係以外にも運転免許証の切り替えや赴任された方のあらゆるサポートをしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

EVバッテリー産業集積地として注目されるハンガリー。ハンガリーは、スズキ(1991年)とオペル(1992年)の進出で自動車産業が盛んになり、中東欧地域(CEE)で最初にeモビリティの概念を導入したことで知られています。現在、ハンガリー政府は、バッテリー製造の可能性を高めるために直接的および間接的なインセンティブを提供し、ヨーロッパで最大のEVバッテリー生産国になりつつあります。また、ハンガリーは、その専門知識、高い生産性、地理的な利便性、競争力のある生産コストを活用し、ヨーロッパで最も魅力的な自動車関連投資先のひとつに成長しています。


自動車産業のEV化によるバッテリー需要の高まり

欧州議会は「Fit for 55」パッケージのひとつとして、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止する法案を可決しました。この結果、グローバル展開している自動車メーカー各社は、EVモデルを次々と発表しました。欧州自動車工業会(ACEA)のデータ(2021年)によると、EU26カ国(マルタを除く)の2021年の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数のシェアは、ガソリン車(全体の40.0%)とディーゼル車(19.6%)は合わせると全体の約6割(ブルーゾーン)を占めたものの、登録台数はそれぞれ前年比17.8%減、31.5%減。対照的に、ハイブリッド車と電気自動車(EV)の全体に占める割合は37.6%(グリーンゾーン)と、前年から15ポイント以上上昇しました。ハイブリッド式EV(HEV)は19.6%、バッテリー式EV(BEV)は9.1%、プラグインハイブリッド車(PHEV)は8.9%で、さらにEVバッテリーの需要が高まることが予想されます。また、現在、中国は世界のリチウムイオン電池(LIB)の生産は中国がほぼ独占しており、2020年には77%を占めていたものの、近年、特にヨーロッパで多くの国がLIB生産国になりつつあり、地理的な多様化が進むとみられています。LIB生産量に占めるヨーロッパのシェアは、2020年の6%から2025年に25%に増加し、中国のシェアは65%に低下すると予測されています。

2021年の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数シェア(EU26カ国)| 出典:ACEA


ハンガリーに多くのバッテリー製造会社が進出

いち早く欧州市場に目をつけていた韓国企業、LG化学はポーランドに、サムスン、SDI、SK Innovationはハンガリーに生産拠点を設けています。さらに、正極材や電解液といったリチウムイオン電池の部材を供給する韓国メーカーも進出しており、欧州自動車メーカーへの電池供給体制が築かれています。日系企業も、GSユアサがハンガリーにリチウムイオン電池の工場を、東レがリチウムイオン電池の部材であるセパレータフィルムの工場を設立しています。


なぜ、ハンガリーではEV 関連の投資が進んでいるのか

ハンガリー経済を産業別に見ると、自動車産業のシェアが高いことが判ります。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BYD、BMW(建設中)がハンガリーで工場を設立しています。これらの会社は、ハンガリーは賃金など生産コストが低いこと、主要市場のオーストリア、ドイツ、チェコなどが近いこと、政府の補助金が得られることを理由にハンガリーに進出してきました。アウディ、メルセデスベンツは既にハンガリー工場でEVも製造しており、中国のBYDは電気バスの組立を行っています。また、建設中のBMWデブレツェン工場ではEVのみを製造する計画です。これらの工場のニーズに応えるために、EVやバッテリー関連のサプライヤーが多数進出しています。ハンガリー政府には「再工業化計画」があり、ハンガリー経済における工業の割合を増やすことを目指しています。工業の分野でも特にEV関係の投資は政府のサポートや補助金を得やすくなっています。


ハンガリーにおける大規模なバッテリー投資の紹介

ハンガリーでは複数の大規模なバッテリー工場の投資が発表されています。どの工場もハンガリー政府のサポートと補助金(Samsung SDIは約130億円)を受けています。


ハンガリーに進出した日系企業の紹介


出典


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