海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にブルガリアのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

ブルガリア市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。

ブルガリア進出


ブルガリアの投資環境について

ブルガリアは南東ヨーロッパに位置する、EU加盟国の中で中レベルの大きさ(110,900 km²)の国であり、人口は約700万人になっています。

1989年の革命で共産主義体制が終わり、1990年に最初の多党選挙が行われました。物価上昇・失業・汚職・犯罪と戦いながら、ブルガリアは民主主義と市場経済への転換を進めました。ブルガリアは2004年にNATO、2007年にEUに加盟しました。

現在、ブルガリアは開放的経済であり、急速な経済成長を達成できましたが、一人当たりの収入はまだEUでは最低レベルです。主な産業には、鉱石・金属採掘、化学製品製造、機械製造、鉄鋼業、バイオテクノロジー、タバコ産業、食品加工、石油精製などがあります。黒海沿いにリゾート地が広がっており、観光産業も盛んです。高速道路の長さは合計734 kmに留まっていますので、インフラの開発の余地があります。事業環境に関して言えば、投資誘致政策として政府が採用している低法人税(10%)が好ましい状況を整えています。しかし、将来の深刻な課題として、広範囲な非公式経済、行政機関における公平性の確保、司法組織、低い生産性などが挙げられます。


ブルガリアに進出している代表的な日系企業

ブルガリアは中東欧諸国の中、最も日系企業が少ない国です。現在ブルガリアで40社の日系企業が活動しており、そのうち12社が製造業です。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
代表的な日系企業は以下の通りです。


在ブルガリア駐在員への便利情報

ブルガリアには現在180名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。ブルガリアでは日本人在留者が少なく、日本人向け環境はそれほど整っておらず、現地適応能力が求められます。駐在員のお子様の教育には日本語補習校(ソフィア)と英語のインターナショナルスクールがいくつもあります。また、英語で利用できるサービスは多くあります。

現地(ソフィア)の生活費は東京より31.9%(家賃込み)安く、特に家賃が安いです。単身者向けアパートの家賃はソフィア中心部で約8.7万円、郊外では6.5万円程度です。(出典:Numbeo.com

現地の通貨は「レフ」(BGN)であり、現在(2024年6月)の為替レートは「1 レフ= 約86.67 円」です。

駐在員の方への便利な情報

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランソフィアにあり
日本人学校なし(※日本語補習校あり)
JETRO事務所なし
国際交流基金文化センターなし
滞在日本人数180人(2022年)
生活費生活費は東京より31.9%(家賃込み)安い


ブルガリア進出のための市場調査サービス概要

シュディアンドカンパニーは御社のブルガリア進出またブルガリア市場参入を成功させるための市場調査サービスを提供しております。ブルガリアのような日本から離れた国への進出は大きなリスクを伴いますが、初期段階から必要な情報が揃っていればリスクを最低限に抑えることができます。

弊社は複数のブルガリア現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得し、提供することができます。また、日本企業のブルガリア進出に関しても豊富な実績があります。

市場調査サービスに関しては、下記のような情報を提供することができます。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。


お気軽にご連絡ください。

ブルガリアやその他中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームから気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。

海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にチェコのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

チェコ市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


チェコの投資環境について

ドイツとオーストリアに挟まれて、中央ヨーロッパに位置するチェコ共和国は、中規模の(78,866 km²)EU加盟国であり、その人口は約1,060万人です。1989年の「ビロード革命」が起こった後、体制は社会主義から民主主義・市場経済体制に転換しました。1993年1月1日に旧チェコスロバキアは平和的にチェコとスロバキアに分離し、武力衝突を免れたことから世間では「ビロード離婚」と呼ばれています。

チェコ共和国は1999年にNATO、2004年にEUに加盟しました。2016年に国名として「Czechia」(チェキア)が正式認定されましたが、フルネームの「チェコ共和国」も用いられています。現在、チェコ共和国は順調な市場経済体制を持ち、中東欧地域では最も経済的に発展している国になっており、1人当たりのGDPはEU平均の92%に達しています。

しかし、その経済はかなり輸出に依存していますので(GDPの80%)、経済成長は外需の減少の影響を受けやすいです。経済の原動力は自動車産業で、チェコ産車のSkoda(現在はフォルクスワーゲン傘下)は現地や周辺国ではもちろん世界的にも高い人気を持っています。インフラはよく整備されており、高速道路は合計1,231 kmあります。また、鉄道は中央ヨーロッパ地域では最も発展しており、その線路網は合計ほぼ10,000 kmに上ります。チェコの通貨である「コルナ」の為替レートは安定しており、2017年には世界最強通貨ランキングのトップに入りました。

チェコにとっての課題として、人口減少、教育制度改革、労働力不足、製造業中心からハイテク産業・サービス業中心の経済への転換、知識経済が挙げられます。


チェコに進出している代表的な日系企業

チェコは国のサイズに比べて中東欧地域では日系企業が最も多い国です。現在チェコで272社の日系企業が活動しており、そのうち107社が製造業です。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
代表的な日系企業は以下の通りです。

チェコにおける日系企業


在チェコ駐在員への便利情報

チェコには現在2,553名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。チェコは日本人が住みやすい環境が整っており、首都プラハに日本人学校とジェトロの事務所があります。日本の食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で販売されており、プラハやブルノを中心に日本食レストランも多いです。

昨今のヨーロッパの物価上昇と円安のため、現地(プラハ)の生活費は東京と同程度になっています。単身者向けアパートの家賃はプラハ中心部では約16.7万円、郊外では12.2万円程度になっています。(出典:Numbeo.com

現地の通貨は「コルナ」(CZK)であり、現在(2024年5月)の為替レートは「1コルナ=6.91円」です。

駐在員の方への便利な情報(まとめ)

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランプラハとブルノを中心に多くあり
日本人学校プラハにあり
JETRO事務所プラハにあり
国際交流基金文化センターなし
進出している邦銀MUFG、SMBC
滞在日本人数2,553人(2022年)
生活費東京と同程度


チェコ進出のための市場調査サービス概要

シュディアンドカンパニーは御社のチェコ進出またチェコ市場参入を成功させるための市場調査サービスを提供しております。チェコのような日本から離れた国への進出は大きなリスクを伴いますが、初期段階から必要な情報が揃っていればリスクを最低限に抑えることができます。

弊社は複数のチェコ現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得し、提供することができます。また、日本企業のチェコ進出に関しても豊富な実績があります。

市場調査サービスに関しては、下記のような情報を提供することができます。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。

お気軽にご連絡ください。

チェコやその他中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームから気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。

海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にルーマニアのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

ルーマニア市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


ルーマニアの投資環境について

ルーマニアは、中欧・東欧・南東欧の中心地に位置している(面積は238,391 km²)EU加盟国です。人口は約1,960万人です。1989年の体制転換の後、政府は自由市場経済政策を執り、旧国営企業の民営化に取り組みました。その際、ルーマニアは急速な改革ではなく、段階的な変化の道を選びました。そのため民主主義への回復には時間がかかりました。ルーマニアは2004年にNATOに、2007年にEUに加盟しました。構造的な改革は不均等だったにも関わらず、近年には工業においてはきわめて力強い輸出、農業においては豊富な収穫を達成しおり、高い経済成長を誇っています。

ルーマニアは多様な経済を持っており、他の中東欧諸国と同様、経済成長の原動力は輸出ですが、国内市場も比較的大きいです。トップ輸出品は、自動車・自動車部品・絶縁電線・精製石油・ゴムタイヤなどです。ルーマニアはEUで4番目に大きな天然ガス生産国(イギリス・オランダ・ドイツに続く)であり、3番目に大きなガス資源(イギリス・オランダに続く)を保有しています。ただ、高速道路の長さは合計747 kmに留まっていますので、国のサイズに比べるとインフラの面ではさらに開発の余地があると言えます。課題としては、高齢化、高学歴人材の流出、脱税、不十分な福祉制度、拡大する財政赤字が挙げられます。


ルーマニアに進出している代表的な日系企業

現在ルーマニアで122社の日系企業が活動しており、そのうち48社が製造業です。ルーマニアは日系企業が多いとは言えず、進出の理由は「賃金コストが低い」がメインです。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
代表的な日系企業は以下の通りです。

ルーマニアにおける日系企業


在ルーマニア駐在員への便利情報

ルーマニアには現在372名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。ルーマニアでは日本人在留者が少なく、日本人向け環境はそれほど整っておらず、多少現地適応能力が求められます。駐在員のお子様の教育には首都ブカレストに日本人学校があります。また、英語で利用できるサービスも多くあります。

2024年5月現在の現地生活費は東京より32.2%(家賃込み)安く、特に家賃と食費が安いです。単身者向けアパートの家賃はブカレスト中心部で約9万円、郊外では6万円程度になっています。(出典:Numbeo.com

現地の通貨は「レウ」(RON)であり、為替レートは「1レウ= 約34.01 円」(2024年5月)です。

駐在員の方への便利な情報(まとめ)

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランブカレストを中心に多くあり
日本人学校ブカレストにあり
JETRO事務所ブカレストにあり
国際交流基金文化センターなし
滞在日本人数372人(2022年現在)
生活費東京より32.2%(家賃込み)安く


ルーマニア進出のための市場調査サービス概要

シュディアンドカンパニーは御社のルーマニア進出またルーマニア市場参入を成功させるための市場調査サービスを提供しております。ルーマニアのような日本から離れた国への進出は大きなリスクを伴いますが、初期段階から必要な情報が揃っていればリスクを最低限に抑えることができます。

弊社は複数のルーマニア現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得し、提供することができます。また、日本企業のルーマニア進出に関しても豊富な実績があります。

市場調査サービスに関しては、下記のような情報を提供することができます。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。


お気軽にご連絡ください。

ルーマニアやその他中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームから気軽にご相談ください。

海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にスロバキアのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

スロバキア市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


スロバキアの投資環境について

スロバキア共和国は中央ヨーロッパの中心に位置し、国土面積49,035 km²、人口約540万人と、EU加盟国の中でも比較的小さな国です。

1989年の「ビロード革命」を経て1993年の「ビロード離婚」と呼ばれる旧チェコスロバキアの分裂により、スロバキア共和国が独立国家として誕生しました。2000年代前半には、自動車産業と電子産業に集中した開放的経済に発展しました。GDPの80%以上を輸出が占めています。

2004年にNATO とEU に加盟し、他の中東欧諸国に先駆けて2009年1月1日にユーロを自国通貨として導入しました。会計やコスト計算はユーロでできることは進出企業にとってメリットになります。

スロバキアはFDI(主に自動車産業)の誘致に成功し、大きな経済成長を果たしました。首都ブラチスラバとオーストリアの首都ウィーンは世界で最も近い首都で、経済の相乗効果が発生しています。今、ブラチスラバではIT産業とサービス業が目覚ましい発展を見せています。例えば、スロバキアのITセキュリティ会社ESETのアンチウィルスソフトは世界的に使われています。

ただ、高速道路は全長463kmであり、中央ヨーロッパ地域で最短であることなど、交通インフラ開発の面で課題があります。その他にも、今後も競争力を保つためには、労働力不足の解消、汚職の払拭、イノベーションを中心とした経済への転換などが必要となるでしょう。


スロバキアに進出している代表的な日系企業

現在スロバキアで58社の日系企業が活動しており、その内22社が製造業です。スロバキアは自動車産業が強いため、日系企業も自動車サプライヤーが多いです。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
代表的な日系企業は以下の通りです。

スロバキアにおける主要な日系企業


在スロバキア駐在員への便利情報

スロバキアには現在327名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。スロバキアは、日本人向け環境はそれほど整っていないが、首都ブラチスラバは日本人も多いウィーンに近いため、色々なサービスを利用しにウィーンに行くのも便利です。日本からスロバキアに行く時もウィーン国際空港を使うのがお勧めです。駐在員のお子様の教育には英語のインターナショナルスクールがいくつもあります。日本の食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で販売されており、ブラチスラバには本格的な日本食レストランもあります。

昨今のヨーロッパの物価上昇と円安のため、現地(ブラチスラバ)の生活費は東京より若干(家賃込み)だけ安く、スーパーマーケットでの買い物(野菜など)がまだ東京より安いです。単身者向けアパートの家賃はワルシャワ中心部で約10万円、郊外では8万円程度です。(出典:Numbeo.com

現地の通貨はユーロ(EUR)です。現在(2024年4月)の為替レートは「1ユーロ=164円」です。

まとめ

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランブラチスラバに多くあり
日本人学校なし
JETRO事務所なし
国際交流基金文化センターなし
滞在日本人数327人(2022年現在)
生活費東京より若干安い


スロバキア進出のための市場調査サービス概要

シュディアンドカンパニーは御社のスロバキア進出またスロバキア市場参入を成功させるための市場調査サービスを提供しております。スロバキアのような日本から離れた国への進出は大きなリスクを伴いますが、初期段階から必要な情報が揃っていればリスクを最低限に抑えることができます。

弊社は複数のスロバキア現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得し、提供することができます。また、日本企業のスロバキア進出に関しても豊富な実績があります。

市場調査サービスに関しては、下記のような情報を提供することができます。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。


お気軽にご連絡ください。

スロバキアやその他中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームから気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。

スズキは軽自動車とバイクで世界的に有名で、インドなどの発展途上国を中心に大きなシェアを誇っています。海外の生産拠点はほとんどが発展途上国ですが、ヨーロッパの工場はハンガリーのみということが注目されます。
スズキはなぜハンガリーを生産拠点として選んだのでしょうか?

エステルゴム市にあるマジャールスズキの工場。出典:Suzuki.hu


日本企業のハンガリーへの投資環境について

1980年代後半におけるソ連の弱体化および中東欧諸国における民主化の流れの中、ハンガリーは1989年、社会主義体制を廃止し、政治・経済を自由化しました。特に経済の自由化に伴い、ハンガリーという未開拓の市場に多くの外資系企業(主にアメリカ、西欧)が進出しはじめました。

ハンガリーは社会主義国家だった時、100%外国資本の企業は認められておらず、外資の資本比率は最大49%に制限されていました。現在のように誰でも簡単に企業を設立できる環境ではありませんでした。もちろん、スズキ社との交渉も極秘で行われました。

しかし、ハンガリーは社会主義圏ではあったものの、ソ連など他の社会主義国家とは異なり、1970年代から生活面ではある程度の自由がありました。政治的な自由はなかった反面、政府は国民を満足させるために福祉政策に力を入れていました。ただ、実施された福祉政策に見合った経済力がなかったため1973年以降、外国の銀行から多額のローンをすることになりました。外国の銀行のほとんどが日本の銀行でした。1980年代半ばにはハンガリーの国債の半分を日本の銀行が持っていた時期もありました。ハンガリーにとって日本は社会主義時代から重要なパートナーだったことがこの事実から窺えます。

日本企業は欧米の企業と比べ、ビジネスの決断するまでに大変時間がかかると言われています。また、リスク回避の意識も高いです。「そこまで調べるか」というまで情報を収集し、それぞれの担当のレベルで会議を重ね、慎重に決断までもっていくのが一般的です。特にリスクが伴う投資になる場合はなおさらです。

ではなぜ、スズキは自由化をして間もないハンガリーに投資を決めて、法人設立からたった1年で生産を開始できたのでしょうか。そもそもなぜハンガリーが選ばれたのでしょうか。


マジャールスズキの設立背景について

日本企業の中ではスズキがハンガリー進出の象徴的な存在でした。スズキは1991年にハンガリー法人「マジャールスズキ社」(「ハンガリースズキ」という意味)を設立。ブダペストから北西40kmのドナウ川沿いの町エステルゴム(Esztergom)で工場の建設に取り掛かりました。建設は順調に進み、生産は翌1992年に開始しました。マジャール・スズキ社はオペル社(当時GMグループ傘下)と並び、ハンガリー初の自動車製造企業となりました。

実は、ハンガリー政府とスズキの交渉は1985年ごろから始まっていたことがあります。スズキが初めてハンガリーに関心を示したのは1984年12月です。元々スズキに声をかけたのはハンガリーではなく、ブルガリアでした。ブルガリア政府はスズキの製造工場を誘致しようとしましたが、スズキはブルガリアでの可能性を精査した結果、ハンガリーの方が投資先として魅力的だと判断したのです。

マジャールスズキ1992年8月28日
マジャールスズキで最初に生産された車両「スイフト」の祝賀会。(1992年8月28日)
出典:InfoEsztergom.hu


マジャールスズキはハンガリー初の日系企業であったのか?

ハンガリーでの自動車工場の設立を検討した日本企業は、スズキが初めてだった訳ではありません。ハンガリー政府は1967年にトヨタと交渉したという噂がありました。1969年には日産自動車の代表団がハンガリーを視察し、西部のジェール市の400ヘクタールの土地に工場設立を検討していました。日産の計画はソ連からの圧力で中止になりました。1994年、日産が検討した土地にアウディが工場を建設しました。

このように長い経済交流の末、自由化直後のハンガリーで日本企業による大型投資、即ちスズキ工場の設立が実現したのです。「やっと」という感覚でした。1985年にスタートし、最終的に話がまとまるまで6年ほどかかりました。その経過をみると、ハンガリーの経済自由化1989年、マジャールスズキ社設立1991年、生産開始1992年というタイムラインも納得していただけるでしょう。


スズキがハンガリーを選んだ理由について

スズキがハンガリーに進出した理由は何だったのでしょうか。「ハンガリー政府の視点」と「スズキ社の視点」で考察しましょう。

まず、「ハンガリー政府の視点」からすると以下の誘致理由が考えられます。

  1. 外国資本の流入によって、自由化後壊滅的な状態にあったハンガリー経済を盛り上げること。
  2. ハンガリーで乗用車を製造する産業を興せること。
  3. 工場の設立で雇用を創出できること。エステルゴム市周辺は元々鉱山地帯で、鉱業の衰退で失業率が高くなっていました。

一方、スズキはなぜハンガリーを進出先として選んだのでしょうか。

1. ハンガリーや旧社会主義諸国の市場性を重視したこと。

スズキは安価で性能が高い車で有名で、経済的にあまり発展していないハンガリーや旧社会主義諸国はスズキにとって有望な市場に見えたでしょう。実際、スズキ工場稼働当初はハンガリーでの国内販売がほとんどでした。

2. 人材が豊富なこと。

ハンガリーは社会主義時代に高水準の教育制度を維持。特に製造業に特化した技術を持った人材が多くいました。社会主義時代には乗用車を生産していませんでしたが、ハンガリー製のバス「イカルス」は社会主義諸国や発展途上国でよく売れていました。バス製造で経験を積んできた熟練労働者がハンガリーに大勢おり、その人材を乗用車製造工場で採用できる見込みがありました。

3. サプライヤーが見つかる可能性があること。

上述の通り、ハンガリーはバスを製造していました。さらに、ソ連から乗用車を輸入する代わりに、1967年からかなりの種類の自動車部品をソ連の自動車産業に提供してきたので、車の部品製造会社が多くありました。最初からスズキの厳しい基準に適合するハンガリーの会社は決して多くありませんでしたが、その数はだんだんと増えていきました。

4. スズキは工場建設に関して好条件で融資を受けられたこと。

建設費用163億フォリントに対し、スズキは110億フォリントのローンを組み、そのうち91億フォリントを国際協力銀行が、11億フォリントを世界銀行が融資しました。しかも国際協力銀行の91億フォリントのローンをハンガリー中央銀行が担保しました。当時、この金額は非常に高いとの認識だったので、国会の承認が必要でした。

5. ハンガリーに投資した日系企業の先例があること。

日本企業がハンガリーに初めて出資したのは1979年です。ハンガリーの中欧国際銀行(Central European International Bank)の設立者に日本の太陽神戸銀行と長期信用銀行が加わっていました。製造業では1984、古河電工とハンガリー企業Pannonplastによる合弁会社が初め設立されました。これらの先例はハンガリーが安全だという印象をスズキに与えたのでしょう。

6. 西への拡大の可能性があること。

当初、スズキの進出理由は、旧社会主義諸国に安い車を提供することでした。しかし、ハンガリーの立地条件は西側諸国も視野に入るのでそれも重大要素だったと考えられます。


マジャールスズキの今後は?

スズキはハンガリーでの生産を始めてから、ハンガリー市場で絶大なシェアを有しています。

最も登録車両台数が多かったのは2003年。39,443台のスズキ車がハンガリーで新規登録されました。2009年~2015年は登録台数が減りましたが、新車ビターラのハンガリー生産が始まったのをきっかけに登録台は回復し出しました。その結果、2016~2022年、スズキブランドは7年連続ハンガリーでマーケットリーダーの座についています。

マジャールスズキの会社沿革。出典:Suzuki.hu

EUにおける自動車排気ガス規制、EV化の流れ等によって、今後EUの自動車市場は大きく変化するとされています。特にハンガリーは各自動車製造会社がEV生産拠点を持ち、EV用バッテリーメーカー大手各社も進出を果たしています。目下、スズキのEV車販売は未定ですが、2023年に総額93億フォリント(約38億円)の新規投資を発表する等ハンガリーで更なる拡大を目指す姿勢を取っています。


出典


ご質問等があれば、気軽にお問い合わせください。

ハンガリーを含める中東欧での事業拡大、市場の状況やビジネスチャンスに関する最新情報をご希望される場合は、問い合わせフォームからご相談ください。

2022年10月18日、ハンガリーのÚjhártyán市(ブダペストから南へ45キロメートル)に建設された東洋インキハンガリーの工場の開所式にご招待いただきました。東洋インキSCホールディングス代表取締役会長である北川様、トーヨーカラー代表取締役社長である岡市様をはじめ、外務貿易省State Secretaryタマーシュ・メンツェル様やÚjhártyán市長シュルツ・ヨ―ジェフ様、SK On Hungaryの代表者やその他韓国企業サプライヤー、 また、東洋インキハンガリープロジェクトの実現に多大な貢献をされた設備業者や商社の方々が出席され、ドイツから来られた日本舞踊の方が踊りを披露される素晴らしい式典でした。

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

Sűdy & Co.(シュディアンドカンパニー)はコンサルタント会社として、日系企業様のハンガリー進出やその他の中東欧地域への進出をサポートをさせていただいていますが、東洋インキ社のハンガリー進出に関しては、我々にコンタクトを取ってこられた時にはすでに進出先はÚjhartyán市と決められていて、さらにハンガリー法人の登録も済まされていたので、弊社としてお手伝いできることは限られていました。ただ、東洋インキハンガリーの投資プロジェクトの初期段階において、自社の従業員を採用されるまで、東洋インキハンガリーから委託を受けて色々な業者とコンタクトを取ったり、ハンガリーに関する基本的な情報を提供したり、微力ながらでも投資プロジェクトのお手伝いをできたことを非常に嬉しく思います。

ハンガリー進出サポートサービスを提供しているSűdy & Co.の取締役会長シュディ・ゾルタン博士とシニアコンサルタント原田知加

東洋インキハンガリーは、韓国のリチウムイオン電池メーカーであるSK Onのハンガリー工場にリチウムイオン電池正極材用導電カーボンナノチューブ(CNT)分散体LIOACCUM®(リオアキュム)を提供する計画ですが、そのバッテリーはフォルクスワーゲングループの電気自動車に搭載されるとのこと。現在30名の従業員を45名近くまで増やし、2026年までにさらに全世界で100億円を投資される計画とのことでした。

環境問題や資源問題、脱炭素への動きなどの流れで、電気自動車へのシフトがさら進んでいくでしょう。欧州においては成長戦略である「欧州グリーンディール」のなかで、2035年までに自動車の二酸化炭素排出量を100%削減する目標を掲げています。

今後もハンガリーや中東欧諸国にリチウムイオン電池関連のメーカーやそのサプライヤー企業が進出の計画を立てられるでしょう。これからハンガリーを中心とする中欧諸国への投資を考えておられる企業様の投資プロジェクトの実現に、弊社がささやかながらでも貢献できれば幸いです。

中欧・中東欧進出を検討しており、市場の状況や機会に関する最新情報が必要な場合は、お気軽にご相談ください。
Copyright © 2024 All Rights Reserved
apartmentcloud-downloadstarstar-halfenvelopeuserusersstorephone-handsetmap-markerbubblepie-chartearthmagnifiercross