2020年にセンター試験が廃止され、翌年からは「大学入学共通テスト」がスタートする。これまでは知識のインプットや問題のパターンを覚えるような学習が求められたが、今後学力観は大きく変わるといわれている。より社会と接続した、論理的思考力や表現力、判断力などが問われるようになるのだ。

こうした日本における教育の変化を受けて、「自分に合う学校」を模索した末、海外に飛び出す若者も増えている。教育評論家のおおたとしまささんが言う。

「実は今、東欧の大学の医学部で学んで医師免許を取得しようとする日本人学生が増えているのです。なかでもハンガリーの人気が高く、日本事務局が開く説明会には年間500~600人の日本人が参加します。そのうち約200人が実際に出願して、100人ほどが入学するそうです」

医学教育に詳しい医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が解説する。

「東欧の医学部は6年間の学費が650万~1200万円ほど。そのうえ物価や生活費も安い。にもかかわらず文化レベルは高く、医学生として学べる内容は日本の医学部と遜色ないのに、入学試験のハードルはそれほど高くありません。その分、入学した後はハードな勉強が求められます。

進級し、卒業するには相当の努力を要するため、医師としての基礎能力は日本の医学部よりも鍛えられるかもしれない。そのうえ、医師資格試験に合格すれば、EU内のどこでも医師として勤務できます」

卒業後に日本で働きたい場合は、日本の医師国家試験に合格する必要がある。

「実際にハンガリーに留学している日本人学生によれば、2013年以降にハンガリーの医学部を卒業して日本の医師国家試験を受験したのは56人で、うち41人が合格したそうです。

合格率は73%ですが、日本の医学部の合格率は88.7%。東欧勢の大健闘といえるでしょう。海外では、いわゆる“受験エリート”や裕福な家庭出身でなくても、語学のハンデさえ乗り越えて一生懸命頑張れば、医師になれる可能性が高い。お金はなくても、バイタリティーのある学生にはもってこいの環境なんです」(上さん)

◆日本で激化する「イス取りゲーム」

上さんが指摘するとおり、日本における医学部受験で合格を手にする学生のほとんどが、塾に通い続け、進学校に籍を置く“受験エリート”だ。おおたさんは現状をこう述べる。

「長引く不況と先行き不透明な世の中を嫌い、『大学ブランドよりも手に職』という志向が高まりました。その最たるものが医学部を目指す若者の増加です。今では“東大より医学部”といわれるほど。

かつては東大の理系学部に進学していた受験生が、地方国公立大の医学部を目指すようになり、“イス取りゲーム”は激化を極めている。つまりどれだけ医師になりたいという気持ちが強くても、偏差値が高くなければ国公立の医学部には入れなくなりました。そのうえ、私大医学部は6年間で2000万~4500万円の学費がかかるとされ、一般的なサラリーマン家庭ではとうてい子供を通わせることはできません」

海外の大学入試が完全に実力勝負であり、どこの大学を出たか、その名前によってヒエラルキーが決まる“学校歴”の格差がないという点も今の若者に評判がいい。

「折しも東京医科大の入試で“女子切り”が発覚するなど、日本の医学部入試は不公平であることに学生は気づきました。それならば実力勝負ができて、女性の医師も多い東欧に渡って医師を目指そうという若者は、今後さらに増えるはずです」(上さん)

医学部に限った話ではない。

近著に『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書』(小学館)があり、大学准教授、メディアアーティストなど多方面で活躍する落合陽一さん(31才)も「この先、日本の学歴社会は崩壊する」と予言する。

「日本では、最も難しい入学試験を突破した東大卒の人が、学歴のヒエラルキーにおいてトップに立つイメージがありますが、国際的には東大の学士卒の人よりも明治大学卒で博士号を取得している人の方が国際社会での研究ブランディング的には評価されます。

学歴的には最終学歴が高い後者の方が上なのは当然のことでしょう。これまで日本では勘違いされがちでしたが、最近の風潮を見ても、こうした誤解はおそらくこの十数年に是正されると思います」

※女性セブン2018年12月20日号

出所: https://news.nifty.com

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