海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にハンガリーのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

ハンガリー市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


ハンガリーの投資環境について

中東欧の真ん中に位置するハンガリーは、中規模の面積(93,032 km²)を有するEU加盟国で、人口は1,000万人弱です。非ユーロ圏で、自国通貨ハンガリー・フォリントが使われています。

ハンガリーの政治体制は、1989年に社会主義から民主主義に転換しました。1990年に最初の多党選挙が行われ、自由市場経済制度が採用されました。1999年にNATO(北大西洋条約機構)、2004年にEUに加盟しました。現与党は選挙で連続4回多数議席を獲得し、長期政権を維持しています。

現在、ハンガリーの市場経済はかなり発展しています。国民1人当たりの収入はEU28カ国平均の約3分の2です。インフラは整備されており、高速道路の長さは合計1,884 kmで中欧では最長の交通網を誇っています。

主な輸出製品は、電子機器、自動車、医薬品などです。食品ではワイン、フォアグラ、鴨肉などが有名です。主な輸出先としてはドイツや他のEU加盟国が挙げられます。

政府は投資企業を積極的に支援しており、特に製造業の強化に力を入れています。現政権の最大の目的は、EUの開発資金とユニークな経済政策を活かすことによって、個人消費や経済成長を促すことです。

ハンガリー経済の原動力は自動車産業になっています。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BMWの大規模自動車工場が国内に4か所あります。法人税が、現在EU圏内で最も低い9%ということが背景にあるとみられます。

近年、政府の手厚い支援もあり、EV(電気自動車)用バッテリー製造関連企業の進出が目立っています(詳しくは、こちらのブログ記事をご参照ください)。バッテリー関連では特に韓国企業と中国企業の数が急増していますが、日系のバッテリーサプライヤーも複数社がハンガリーを生産拠点としています。ハンガリーのアウディ、メルセデスベンツ、BMWの自動車工場のでもEVの製造が予定されています。今後、ハンガリーはヨーロッパのEV産業の中心になると想定されています。

ハンガリーは近年、EUとの関係が緊迫し、その独特な外交政策のためEUの中の「異端児」とみられています。EUから離脱するのではないかと懸念されることもあります。しかし、ハンガリー経済はEUの経済と密接に関係していることを考えるとEU離脱が非現実的なのは明らかです。

課題としては、少子化や人材の海外流出による労働力不足、輸出への依存、ロシア産エネルギーへの依存、EUとの政治的亀裂が挙げられます。


ハンガリーに進出している代表的な日系企業

ハンガリーでは、体制転換直後から日系企業が進出しています。最初の大型投資は1991年のスズキ自動車で、それに続き2000年代前半まで同社のサプライヤーなど多くの日系企業がハンガリーに進出しました。現在ハンガリーでは、182社の日系企業が活動しており、うち54社が製造業です。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
ハンガリーの代表的な日系企業は下記です。

  • スズキ自動車:エステルゴム市で自動車生産
  • デンソー:セーケシュフェヘールヴァール市で自動車部品製造
  • イビデン:ドゥナヴァルシャーニ市でDPF製造
  • ブリヂストン:タタバーニャ市でタイヤ製造
  • 日清食品:ケチュケメート市でカップヌードル製造

在ハンガリー駐在員の方への便利な情報

ハンガリーには現在1,975名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。日本人向けのインフラが整っており、首都ブダペストにジェトロ(日本貿易振興機構)の事務所、国際交流基金の文化センター、日本人学校などがあります。日本食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で入手でき、ブダペストを中心に日本食レストランも多いです。ハンガリーには親日的な人が多く、日本語の通訳ができる現地の人材の獲得は容易です。
ブダペストの一般生活費は東京より18.5%(家賃込み)安く、特に食品、光熱費などが安価です。1人用のアパートの家賃はブダペスト中心部では約8万円、郊外では6万円程度になっています。(出典:Numbeo.com

現地通貨は「フォリント」で、為替レートは「1 円= 約2.45 フォリント」(2023年8月現在)となっています。全国的に両替所が多く、日本円の両替にも対応しています。

まとめ

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランブダペストを中心に多くあり
日本人学校ブダペストにあり
JETRO事務所ブダペストにあり
国際交流基金文化センターブダペストにあり
滞在日本人数1,975人(2022年現在)
生活費(ブダペスト)(東京より)18.5%(家賃込み)安い


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  • ハンガリーの特定の企業や業界に関する情報(業界のリーダー企業、各企業のシェア、生産体制、サプライチェーン、株主構成)
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