2024年1月1日にハンガリーの滞在許可制度に大幅な変更があり、滞在許可申請の条件や許可証の種類が変わりました。新しい制度で移民局での申請手続きが開始されたのは、2024年3月1日となります。申請用紙などのフォーマットも変更になっています。

前回のブログ記事でハンガリーの滞在許可について紹介し、特に駐在員の方が必要とする「ICT許可証」と「就労許可証と滞在許可証が一体となったもの」をご説明しました。2024年1月1日に導入された新しい制度の主な特徴を紹介いたします。

大幅に変更されたのは「就労許可証と滞在許可証が一体となったもの」です。2024年1月1日以降、ハンガリーで就労を希望する外国人は「ゲストワーカー滞在許可」「EUブルーカード」「ハンガリーカード」の3種類の滞在許可が申請できます。


ICT許可ハンガリー語:Vállalaton belüli áthelyezés」

ICT許可証は「海外転勤」を理由に申請するもので、日系企業の方がよく利用される滞在許可です。2024年1月からの法律変更はICT許可証には影響せず、以前と同じ条件で申請が可能です。

注意点は有効期限が最長3年間であること。3年後も引き続きハンガリーで就労を希望する場合、ICT許可証の新しい申請を行っていただくか(※却下される可能性もあります)、もしくは以下に記載しております別の種類の許可証への申請が必要となります。


ゲストワーカー滞在許可「ハンガリー語:Vendégmunkás tartózkodási engedély」

「ゲストワーカー滞在許可」は2024年からの新制度で導入された概念で、高度な資格を有しない者が対象で、主に工場で働く技能者が想定されています。ゲストワーカーが自分で申請するのは難しいので、派遣会社、もしくは雇用先が代理申請することが一般的です。申請の基本条件は雇用先の企業が当局に登録・認定された「認定雇用主」または「認定人材派遣会社」でなければなりません。

新法律は「ゲストワーカー」を

  1. 投資プロジェクトの立ち上げに必要な人財
  2. 工場労働者
  3. 季節労働者

の3種類に定義しています。1と2の場合、雇用主は社宅などゲストワーカーが住む宿泊施設を提供する義務があります。その他注意事項は下記となります。

産業制限

ゲストワーカーが就労できる職種は限定されており、およそ300職種にわたり、ゲストワーカー許可証での採用が禁止されています。人材不足が問題となっている産業の業界ではゲストワーカーとしての外国人の採用が可能です。

国籍制限

ゲストワーカーの国籍も限定されており、2024年現在はハンガリーが提携を結ぶ以下の15ヶ国からのみ採用が可能です。

許可証の期限

滞在許可の期限は最長2年間で、1回限り追加で1年を延長することができます。つまり、ゲストワーカーの場合、合計で最長3年間の就労と滞在が可能です。

家族連れ

ゲストワーカー滞在許可では長期滞在許可への切り替え、家族の呼び寄せができないとされています。


就労目的のゲストワーカー滞在許可「ハンガリー語:Munkavállalás célú tartózkodási engedély, Vendégmunkás tartózkodási engedély」

大卒資格がなくても申請することが可能です。ゲストワーカー滞在許可の期限は最長2年間で、1回限り追加で1年を延長することができます。つまり、ゲストワーカーの場合、合計で最長3年間の就労と滞在が可能です。上記に15ヶ国以外からの採用も可能です。

雇用先の企業もワーカーに代わって滞在許可の申請をすることもできます。ゲストワーカーが自分で申請するのは難しいので、派遣会社が代理申請することが一般的です。ゲストワーカー滞在許可では長期滞在許可への切り替え、家族の呼び寄せができません。

ハンガリーの滞在許可証申請の革新について


EUブルーカードハンガリー語:EU Kék Kártya」

「EUブルーカード」は大卒資格を持ち、ハンガリーで高度なスキルを要する役職に就く外国人が申請できます。申請者は希望の役職が必要とするスキルに対応する資格を持っていなければならないことが重要なポイントです。

大学の専攻で役職が限定されることは、日本ではほとんどありません。ただ、ハンガリーで就労を希望する場合、最終学歴の専攻がボトルネックになることもあります。例えば、文学部卒業者がハンガリーで経理として勤務したい場合などは、よほどの理由付けをしない限り、却下される可能性が高いです。

「EUブルーカード」の申請時には有効である労働契約書と大学卒業証明書の提示が求められます。大学卒業証明書はハンガリー語でない場合、ハンガリー国立翻訳事務所による公証翻訳を添付しなければなりません。

有効期限は最長4年です。期限が切れる30日前に延長申請をする必要があります。家族の呼び寄せが可能です。


ハンガリーカード「ハンガリー語:Magyar Kártya」

その他「ハンガリーカード」という滞在許可証の種類がありますが、高等教育担当大臣の声明に記載された資格を有する者のみ申請できます。こちらは、基本的に日系企業様向けではありません。

ハンガリーの滞在許可証申請の革新について


まとめ

2024年1月に新制度が導入され、2024年3月1日より再び滞在許可の申請ができるようになりました。申請がストップしていた2ヵ月の間、申請の再開を待っていた方々が殺到しています。これまで認められていた方法が認められなくなったり、手続き方法が変わったり、申請書記載の内容が変更になったり、許可証発行の条件は厳しくなっている印象です。移民局のシステムが非常に不安定で、オンライン申請が上手くできない日もあります。

このような状況ですが、ハンガリーに駐在員を派遣されたい企業様、ハンガリーで就労を希望される日本人のために移民局の担当者や移民局に近い弁護士とやり取りをしながら、皆様の就労許可証・滞在許可証取得が確実に取得できるよう、サポートを行っています。


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スズキは軽自動車とバイクで世界的に有名で、インドなどの発展途上国を中心に大きなシェアを誇っています。海外の生産拠点はほとんどが発展途上国ですが、ヨーロッパの工場はハンガリーのみということが注目されます。
スズキはなぜハンガリーを生産拠点として選んだのでしょうか?

エステルゴム市にあるマジャールスズキの工場。出典:Suzuki.hu


日本企業のハンガリーへの投資環境について

1980年代後半におけるソ連の弱体化および中東欧諸国における民主化の流れの中、ハンガリーは1989年、社会主義体制を廃止し、政治・経済を自由化しました。特に経済の自由化に伴い、ハンガリーという未開拓の市場に多くの外資系企業(主にアメリカ、西欧)が進出しはじめました。

ハンガリーは社会主義国家だった時、100%外国資本の企業は認められておらず、外資の資本比率は最大49%に制限されていました。現在のように誰でも簡単に企業を設立できる環境ではありませんでした。もちろん、スズキ社との交渉も極秘で行われました。

しかし、ハンガリーは社会主義圏ではあったものの、ソ連など他の社会主義国家とは異なり、1970年代から生活面ではある程度の自由がありました。政治的な自由はなかった反面、政府は国民を満足させるために福祉政策に力を入れていました。ただ、実施された福祉政策に見合った経済力がなかったため1973年以降、外国の銀行から多額のローンをすることになりました。外国の銀行のほとんどが日本の銀行でした。1980年代半ばにはハンガリーの国債の半分を日本の銀行が持っていた時期もありました。ハンガリーにとって日本は社会主義時代から重要なパートナーだったことがこの事実から窺えます。

日本企業は欧米の企業と比べ、ビジネスの決断するまでに大変時間がかかると言われています。また、リスク回避の意識も高いです。「そこまで調べるか」というまで情報を収集し、それぞれの担当のレベルで会議を重ね、慎重に決断までもっていくのが一般的です。特にリスクが伴う投資になる場合はなおさらです。

ではなぜ、スズキは自由化をして間もないハンガリーに投資を決めて、法人設立からたった1年で生産を開始できたのでしょうか。そもそもなぜハンガリーが選ばれたのでしょうか。


マジャールスズキの設立背景について

日本企業の中ではスズキがハンガリー進出の象徴的な存在でした。スズキは1991年にハンガリー法人「マジャールスズキ社」(「ハンガリースズキ」という意味)を設立。ブダペストから北西40kmのドナウ川沿いの町エステルゴム(Esztergom)で工場の建設に取り掛かりました。建設は順調に進み、生産は翌1992年に開始しました。マジャール・スズキ社はオペル社(当時GMグループ傘下)と並び、ハンガリー初の自動車製造企業となりました。

実は、ハンガリー政府とスズキの交渉は1985年ごろから始まっていたことがあります。スズキが初めてハンガリーに関心を示したのは1984年12月です。元々スズキに声をかけたのはハンガリーではなく、ブルガリアでした。ブルガリア政府はスズキの製造工場を誘致しようとしましたが、スズキはブルガリアでの可能性を精査した結果、ハンガリーの方が投資先として魅力的だと判断したのです。

マジャールスズキ1992年8月28日
マジャールスズキで最初に生産された車両「スイフト」の祝賀会。(1992年8月28日)
出典:InfoEsztergom.hu


マジャールスズキはハンガリー初の日系企業であったのか?

ハンガリーでの自動車工場の設立を検討した日本企業は、スズキが初めてだった訳ではありません。ハンガリー政府は1967年にトヨタと交渉したという噂がありました。1969年には日産自動車の代表団がハンガリーを視察し、西部のジェール市の400ヘクタールの土地に工場設立を検討していました。日産の計画はソ連からの圧力で中止になりました。1994年、日産が検討した土地にアウディが工場を建設しました。

このように長い経済交流の末、自由化直後のハンガリーで日本企業による大型投資、即ちスズキ工場の設立が実現したのです。「やっと」という感覚でした。1985年にスタートし、最終的に話がまとまるまで6年ほどかかりました。その経過をみると、ハンガリーの経済自由化1989年、マジャールスズキ社設立1991年、生産開始1992年というタイムラインも納得していただけるでしょう。


スズキがハンガリーを選んだ理由について

スズキがハンガリーに進出した理由は何だったのでしょうか。「ハンガリー政府の視点」と「スズキ社の視点」で考察しましょう。

まず、「ハンガリー政府の視点」からすると以下の誘致理由が考えられます。

  1. 外国資本の流入によって、自由化後壊滅的な状態にあったハンガリー経済を盛り上げること。
  2. ハンガリーで乗用車を製造する産業を興せること。
  3. 工場の設立で雇用を創出できること。エステルゴム市周辺は元々鉱山地帯で、鉱業の衰退で失業率が高くなっていました。

一方、スズキはなぜハンガリーを進出先として選んだのでしょうか。

1. ハンガリーや旧社会主義諸国の市場性を重視したこと。

スズキは安価で性能が高い車で有名で、経済的にあまり発展していないハンガリーや旧社会主義諸国はスズキにとって有望な市場に見えたでしょう。実際、スズキ工場稼働当初はハンガリーでの国内販売がほとんどでした。

2. 人材が豊富なこと。

ハンガリーは社会主義時代に高水準の教育制度を維持。特に製造業に特化した技術を持った人材が多くいました。社会主義時代には乗用車を生産していませんでしたが、ハンガリー製のバス「イカルス」は社会主義諸国や発展途上国でよく売れていました。バス製造で経験を積んできた熟練労働者がハンガリーに大勢おり、その人材を乗用車製造工場で採用できる見込みがありました。

3. サプライヤーが見つかる可能性があること。

上述の通り、ハンガリーはバスを製造していました。さらに、ソ連から乗用車を輸入する代わりに、1967年からかなりの種類の自動車部品をソ連の自動車産業に提供してきたので、車の部品製造会社が多くありました。最初からスズキの厳しい基準に適合するハンガリーの会社は決して多くありませんでしたが、その数はだんだんと増えていきました。

4. スズキは工場建設に関して好条件で融資を受けられたこと。

建設費用163億フォリントに対し、スズキは110億フォリントのローンを組み、そのうち91億フォリントを国際協力銀行が、11億フォリントを世界銀行が融資しました。しかも国際協力銀行の91億フォリントのローンをハンガリー中央銀行が担保しました。当時、この金額は非常に高いとの認識だったので、国会の承認が必要でした。

5. ハンガリーに投資した日系企業の先例があること。

日本企業がハンガリーに初めて出資したのは1979年です。ハンガリーの中欧国際銀行(Central European International Bank)の設立者に日本の太陽神戸銀行と長期信用銀行が加わっていました。製造業では1984、古河電工とハンガリー企業Pannonplastによる合弁会社が初め設立されました。これらの先例はハンガリーが安全だという印象をスズキに与えたのでしょう。

6. 西への拡大の可能性があること。

当初、スズキの進出理由は、旧社会主義諸国に安い車を提供することでした。しかし、ハンガリーの立地条件は西側諸国も視野に入るのでそれも重大要素だったと考えられます。


マジャールスズキの今後は?

スズキはハンガリーでの生産を始めてから、ハンガリー市場で絶大なシェアを有しています。

最も登録車両台数が多かったのは2003年。39,443台のスズキ車がハンガリーで新規登録されました。2009年~2015年は登録台数が減りましたが、新車ビターラのハンガリー生産が始まったのをきっかけに登録台は回復し出しました。その結果、2016~2022年、スズキブランドは7年連続ハンガリーでマーケットリーダーの座についています。

マジャールスズキの会社沿革。出典:Suzuki.hu

EUにおける自動車排気ガス規制、EV化の流れ等によって、今後EUの自動車市場は大きく変化するとされています。特にハンガリーは各自動車製造会社がEV生産拠点を持ち、EV用バッテリーメーカー大手各社も進出を果たしています。目下、スズキのEV車販売は未定ですが、2023年に総額93億フォリント(約38億円)の新規投資を発表する等ハンガリーで更なる拡大を目指す姿勢を取っています。


出典


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ハンガリーでビジネスを始めるにあたり、最初のステップとなるのは会社設立です。個人による起業であっても、ハンガリーに進出を計画する企業であってもこのプロセスは同じです。

会社を設立する際、先ずは目的に合った会社形態を決定する必要があります。ハンガリーには以下の主な会社形態が存在します。(個人事業主などは対象外です。)

※以下はハンガリーの会社形態を示しています。翻訳として日本のものと同じ名称を使っていますが、完全に別物となっています。

ハンガリーにおける会社設立


合資会社「Bt.」

合資会社(Betéti társaság、略:Bt.)は設立に最低2名、主な責任を持つ「メインメンバー」と責任が軽い「サブメンバー」が必要で、会社の活動においてオーナーが個人として無限の責任を持っています。上の3形態の中で合資会社の設立は最も費用が低いですが、小規模会社がほとんどです。企業相手にビジネスを考えている場合は、あまりお勧めしません。また、無限責任を取ることが基本条件ですので、ハンガリーまたはEUで資産を多く持たない外国人が合資会社を設立できたとしても、移民局から滞在許可が下りないリスクがあります。


有限責任会社「Kft.」

有限責任会社(Korlátolt felelősségű társaság、略:Kft.)は、会社サイズと関係なくハンガリーで最もポピュラーな会社形態です。名称の通り、会社のオーナーの責任は有限で、資本金にのみ及びます。有限責任会社の設立には資本金が最低300万フォリント(最低30%または90万フォリントは現金であること)が必要ですので、合資会社と比較してコストはかかります。


株式会社「Rt., Zrt., Nyrt.」

日本と違い、ハンガリーには株式会社(Részvénytársaság、略:Rt., Zrt., Nyrt.)はそれほど多くありません。ハンガリーで「株式会社」は「大企業」というイメージが強いです。株式会社の設立コストが最も高く、資本金は最低500万フォリントが条件です。株式会社には株式総会と役員会という組織が必要になります。株式会社の株主の責任範囲は有限責任会社と同じく資本金に限られています。株式会社では株式の譲渡などが可能なので、株式の所有構成は変更がしやすいです。株式による配当の支払いもできます。事業内容によっては、株式会社の会社形態が義務付けられることもあります。


ハンガリーにおける会社設立プロセス

どちらの会社形態を選ぶにしてもハンガリーで会社を設立するには、必ずハンガリーで登録されている弁護士を通さなければなりません。個人事務所の弁護士から大きな国際的な弁護士事務まで、選択肢は色々です。大きな違いは、英語での言語対応ができるかと言うことと料金です。料金が安い弁護士はハンガリー語以外で対応できない可能性がある一方、英語対応が可能な弁護士事務所は料金が高くなります。

弁護士を決めたら、弁護士との契約を結びます。ハンガリーの法人名、会社形態、資本金、会社の事業内容、オーナーや法人の代表、会計会社や本社所在地を決めないといけません。会社設立に必要な書類の作成に当たり、幾つかの書類が求められます。例えば、会社のオーナーが日本にある親会社の場合、日本の親会社の設立証明書の正式なハンガリー語訳と外務省が発行するアポストロフィーを提出しなければなりません。

ハンガリーに駐在員がまだいない段階で会社を設立する場合は、ハンガリーに登録された住所を持つデリバリー・エージェントを任命する必要があります。デリバリー・エージェントが会社設立関係で送られる正式文書を受け取り、書類を転送します。

書類が提出されたら、だいたい1週間ぐらいで会社の仮登録が終了します。オンライン上では会社が登録されますので、会社に関するさらなる手続きに移ることができます。

ハンガリーにおける会社設立

法人用銀行口座として、ハンガリーで登録された銀行での口座開設が次のステップです。開設には、法人の登記簿や定款、法人代表者の署名見本、仮登録が済んでいることを示すE-aktaと呼ばれるデジタル書類が必要です。法人代表者が銀行に赴き、口座を開設します。

仮登録から約1~2ヶ月後に法人の本登録が終了します。この後にハンガリーでのビジネスを開始することができます。

会社設立の実質的な手続きは弁護士が行います。弁護士や会計事務所の選択、デリバリー・エージェント業務、銀行口座開設、オフィス物件探し、ITシステム業者、人材紹介会社探しはハンガリーのこれらのパートナー探しをサポートするような信頼できるコンサルがいると安心です。


ハンガリーにおける会社設立ならシュディ社にお任せください。

弊社では、土地の選択や市場調査などのコンサルティング業務に加え、信頼できるパートナーの紹介や上記の業務をサポートしております。また、会社設立後に必要となる駐在員の就労許可の申請、免許切り替え、個人用銀行口座開設、アパート探しなどの駐在員やご家族向けのサービスで、皆様のハンガリーでの駐在生活をより安心したものに。

詳しくは、こちらのサービスページをご参照ください。


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ハンガリーを含む中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。

海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にハンガリーのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。

ハンガリー市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。


ハンガリーの投資環境について

中東欧の真ん中に位置するハンガリーは、中規模の面積(93,032 km²)を有するEU加盟国で、人口は1,000万人弱です。非ユーロ圏で、自国通貨ハンガリー・フォリントが使われています。

ハンガリーの政治体制は、1989年に社会主義から民主主義に転換しました。1990年に最初の多党選挙が行われ、自由市場経済制度が採用されました。1999年にNATO(北大西洋条約機構)、2004年にEUに加盟しました。現与党は選挙で連続4回多数議席を獲得し、長期政権を維持しています。

現在、ハンガリーの市場経済はかなり発展しています。国民1人当たりの収入はEU28カ国平均の約3分の2です。インフラは整備されており、高速道路の長さは合計1,884 kmで中欧では最長の交通網を誇っています。

主な輸出製品は、電子機器、自動車、医薬品などです。食品ではワイン、フォアグラ、鴨肉などが有名です。主な輸出先としてはドイツや他のEU加盟国が挙げられます。

政府は投資企業を積極的に支援しており、特に製造業の強化に力を入れています。現政権の最大の目的は、EUの開発資金とユニークな経済政策を活かすことによって、個人消費や経済成長を促すことです。

ハンガリー経済の原動力は自動車産業になっています。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BMWの大規模自動車工場が国内に4か所あります。法人税が、現在EU圏内で最も低い9%ということが背景にあるとみられます。

近年、政府の手厚い支援もあり、EV(電気自動車)用バッテリー製造関連企業の進出が目立っています(詳しくは、こちらのブログ記事をご参照ください)。バッテリー関連では特に韓国企業と中国企業の数が急増していますが、日系のバッテリーサプライヤーも複数社がハンガリーを生産拠点としています。ハンガリーのアウディ、メルセデスベンツ、BMWの自動車工場のでもEVの製造が予定されています。今後、ハンガリーはヨーロッパのEV産業の中心になると想定されています。

ハンガリーは近年、EUとの関係が緊迫し、その独特な外交政策のためEUの中の「異端児」とみられています。EUから離脱するのではないかと懸念されることもあります。しかし、ハンガリー経済はEUの経済と密接に関係していることを考えるとEU離脱が非現実的なのは明らかです。

課題としては、少子化や人材の海外流出による労働力不足、輸出への依存、ロシア産エネルギーへの依存、EUとの政治的亀裂が挙げられます。


ハンガリーに進出している代表的な日系企業

ハンガリーでは、体制転換直後から日系企業が進出しています。最初の大型投資は1991年のスズキ自動車で、それに続き2000年代前半まで同社のサプライヤーなど多くの日系企業がハンガリーに進出しました。現在ハンガリーでは、182社の日系企業が活動しており、うち54社が製造業です。(出典:海外進出日系企業拠点数調査
ハンガリーの代表的な日系企業は下記です。

在ハンガリー駐在員の方への便利な情報

ハンガリーには現在1,975名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。日本人向けのインフラが整っており、首都ブダペストにジェトロ(日本貿易振興機構)の事務所、国際交流基金の文化センター、日本人学校などがあります。日本食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で入手でき、ブダペストを中心に日本食レストランも多いです。ハンガリーには親日的な人が多く、日本語の通訳ができる現地の人材の獲得は容易です。
ブダペストの一般生活費は東京より18.5%(家賃込み)安く、特に食品、光熱費などが安価です。1人用のアパートの家賃はブダペスト中心部では約8万円、郊外では6万円程度になっています。(出典:Numbeo.com

現地通貨は「フォリント」で、為替レートは「1 円= 約2.45 フォリント」(2023年8月現在)となっています。全国的に両替所が多く、日本円の両替にも対応しています。

まとめ

日本食材スーパーマーケット、アジアショップなどにあり
日本食レストランブダペストを中心に多くあり
日本人学校ブダペストにあり
JETRO事務所ブダペストにあり
国際交流基金文化センターブダペストにあり
滞在日本人数1,975人(2022年現在)
生活費(ブダペスト)(東京より)18.5%(家賃込み)安い


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2022年2月24日早朝、ロシア軍はウクライナに攻め込み、ヨーロッパはユーゴスラビア紛争以来20年以上ぶり戦火に見舞われることになりました。戦闘は今も止んでいません。侵攻直後、国連やほとんどの先進国がロシアの戦争行為を厳しく非難し、ロシアへの対抗手段を取り出しました。EUは特にウクライナを支持するスタンスを取りました。にもかかわらずEUの一員であるハンガリーは他加盟国と違い、ウクライナに対する支持にはあまり積極的ではありませんでした。逆に、ウクライナへの軍事支援を拒否したり、制裁の邪魔をしたりすることで注目され、西側メディアにより早々に「親ロシア派」に分類されてしまいました。それは本当に正しい評価でしょうか。ハンガリーは本当に「親ロシア派」なのかみていきましょう。


踏みつぶされる歴史、ハンガリーとロシア

歴史的を振り返ると、ハンガリーが親ロシア派になる理由は何一つ見つかりません。ハンガリーは1848年、オーストリアに対して独立戦争をおこしました。勝利寸前でオーストリア皇帝がロシア皇帝に援助を求め、ハンガリー独立政権はロシアの圧倒的な軍事力によって潰されました。

第二次世界大戦で、ハンガリーは枢軸国のドイツと共にソ連と戦いました。ソ連には多くのハンガリー人兵士が送り込まれ、戦死しました。後にハンガリー本土もドイツ対ソ連の戦場となり、ブダペスト包囲戦は第二次世界大戦で2番目に長い市街戦でした。戦争中はソ連軍による強奪で民間人の被害も大きかったと言われています。

そして第二次世界大戦後、ハンガリーはソ連軍に占領されたが故に社会主義ブロックに強制的に組み入れられたのです。ソ連の全面支援を受けていた共産党が他の政党を潰し、1947年の総選挙で政権を取り、ハンガリーにおける社会主義の時代が始まりました。

社会主義がもたらしたのは、貧困と自由の剝奪です。1956年のハンガリー動乱では、国民は共産党による支配に対し武装蜂起し部分的には成功しました。しかし、最終的にはソ連軍が押し寄せ、ブダペストは再度戦場と化し、自由を求める運動は容赦なく潰されました。

ハンガリーは本当に「親ロシア派」なのか?
1956年のハンガリー動乱 、市民はソ連の戦車に乗り自由を宣言。出典:Történelemoktatók.hu

その後、ソ連はハンガリーに常時駐屯し続けました。1989年の体制転換時には、「ロシア人は出ていけ」がスローガンになったくらいロシアに対するイメージは悪かったのです。多党制装導入による体制転換後は、西側との関係構築を積極的に進め、ロシアとの政治・経済的関係は大きく後退しました。


オルバン政権の独自路線、経済成長を見込んで目先は東へ

前述の通り、歴史的に見るとハンガリーは少なくとも3回はロシアによってひどい目に合わされています。にもかかわらず、現在のハンガリー政府はなぜ親ロシア的な言動を示しているのか疑問に思えるでしょう。これには政治・経済的な背景があります。

先ず、この10年のオルバン政権の外交戦略を考える必要があります。「東方政策」です。
「東方政策」とは、中国・ロシア・中近東・韓国・日本、その他のアジア諸国との政治・経済関係をより緊密にする戦略です。ブダペストの主要広場である「モスクワ広場」を「セール・カルマン広場」に改名し、ソ連(捕虜問題など)や共産主義を積極的に非難していたオルバン政権からは意外な政策もみえるかもしれませんが、東方政策はロシアだけが眼中にあった訳ではありません。

東方政策の一面、テュルク諸国機構の会議に参加するオルバン首相(右側)出典:Kormány.hu

「東方政策」の基本的な考えは、今後、成長する地域は西ではなく東だということです。ハンガリーは元々中央アジアから移動してきた騎馬民族が作った国なので、東の国とうまくやっていけるという昔のツラン主義(中央アジアを起源とするとされる様々な民族の民族的・文化的統一性を主張する思想で20世紀前半のハンガリーで人気が高かった)の名残のような思想性もあります。中でもロシアと中国という強大な2ヶ国との関係構築は避けられません。東側諸国ブロックの崩壊後、ハンガリーはこれらの国とほぼゼロから関係を再構築する必要があったことは留意すべきです。オルバン政権は10年程度の時間をかけてこの関係構築に力を入れて、ようやく2019年~22年あたりで結果が見え出していたのです。

そこに勃発したのがロシア・ウクライナ戦争です。10年かけてやっと結果が見え出した東方政策を全部帳消しにできるか、という悩みに直面することになりました。当初、ロシア・ウクライナ戦争は早期決着することも予想されていましたので、ハンガリー政府はなるべくロシアを刺激しない方向で様子を見ることにしたのです。


「エネルギー」という切れ札を持ったロシア

ハンガリーは、ウクライナともロシアとも特に貿易は盛んとは言えず、ハンガリー企業にとってロシア市場は存在しなくてもあまり困ることはありません。ロシア製ウォッカ以外はロシア製の商品はハンガリーの店頭には並んでいません。ただ、ある分野でのみロシアの存在は大きい。それはエネルギー分野です。

ハンガリーは国内で消費する原油と天然ガスのほとんどを、パイプラインを通してロシアから輸入しています。ロシアからのエネルギー供給が止まれば、ハンガリーはかなり困難な状況に陥ります。ロシアがエネルギーを「武器」として使った事例は過去にもいくつもありましたし、ハンガリーもその被害を被ったことがあります。常にエネルギー供給が止められるリスクがあるため、ハンガリーはロシアを意識せざるを得ない状況にあることは重要な点です。

ロシアの原油パイプライン(「友情」)出典:DW

また、ハンガリーの経済は、外国企業による製造関連の投資で成り立っている部分が大きいため、エネルギー供給が途絶えてしまうようなリスクは、ハンガリーの経済的強みを大幅に減らします。例えば、BMWの工場をハンガリーに誘致できたことを誇りに思っているオルバン政権は、ロシアからのエネルギー供給が途絶えればBMWに対して面子が潰れてしまうでしょう。従って、ハンガリー政府はエネルギー供給で問題が生じるようなリスクを取ることはできないのです。実際、戦争勃発後、ドイツ向けのパイプライン、ノード・ストリームはロシアによって止められ、そのリスクは顕在化しました。


敵の敵は味方なのか?ハンガリーのウクライナとの関係

他方ハンガリーは元々ウクライナとは難しい関係にありました。ロシア・ウクライナ戦争が始まった当時、ハンガリーとウクライナ関係はどん底でした。原因はウクライナによる言語法の施行です。ウクライナは、2014年のロシアによるクリミア併合後、同化政策の一貫として学校や役所などでウクライナ語以外の言語の使用を制限する法律を採決しました。主たる目的はロシア語を排除することでしたが、その他の少数民族の言葉であるポーランド語とハンガリー語の使用も制限されました。ウクライナ西部には数十万人のハンガリー人が住んでいます。結果的にこの人たちは母国語であるハンガリー語の使用を制限されてしまったのです。ハンガリー政府は法律採決直後から強く反発しましたが、ウクライナ政府は聞く耳を持ちませんでした。これだけでも両国間にはかなりの政治的緊張が生じたので、過去の経緯を忘れて、ロシアに侵攻されたウクライナアを「全面的支援せよ」というのはなかなか受け入れがたいところがありました。


西にも東にも忖度、ハンガリーによるウクライナ支援

それでもハンガリーはEU加盟国であり、EU内の空気を読んで最初の段階からウクライナを支持しました。戦争勃発直後、国境を開放し、ウクライナ人が自由に入れるようにし、ハンガリーに滞在したい人たちには一時滞在許可証を発行しました。他の国に行きたい人には無料で鉄道などの公共交通機関を使え、ハンガリーを通過することができるようにしました。

またハンガリーは、EUの石油・天然ガスの禁輸措置は免除されているとはいえ、EUのロシアに対する制裁に関する条約をすべて批准しています。軍事的な支援はしていませんが、人道的な支援は戦争勃発時から行っています。政府主導の支援のみならず自治体や民間企業も支援物資を提供してきました。ハンガリーの工場では多くのウクライナ人が働いており、その家族を呼び寄せるため企業は協力しました。

2022年末から2023年にかけて戦況はロシアにとってあまり望ましくないことがみえてきました。エネルギー価格も下がってきており、ハンガリー政府はロシアと多少距離を置くようになってきています。2022年11月には、ハンガリーの大統領がキーウを正式訪問しました。2023年8月に再び訪問する予定です。ハンガリー政府が積極的に参加していたロシア主導の「国際投資銀行」(IBB)からも2023年4月、脱退しました。エネルギーに関しては、政府は他の輸入先を開拓しようとしています。ハンガリーが、今後もロシアを信頼に値するパートナーとみなしていたら、このような行動はしないでしょう。

ウクライナのゼレンスキー大統領とハンガリーのノヴァーク大統領がキーウで。出典:Telex


実は「親ロシア」よりも「親ウクライナ」/「親EU」

一般国民の意見はどうでしょう。EUは定期的に加盟各国でEurobarometerという世論調査を行っています。2023年6月の調査で、ウクライナに関する質問についてハンガリー人は次のように回答しています。

ウクライナ難民に対する人道的支援に賛成86%▽ウクライナに対する経済的な支援に賛成60%▽ロシアに対する制裁に賛成59%▽ウクライナの軍事的な支援に賛成44%でした。この結果をみれば、ハンガリー人の過半数はロシアよりもウクライナに親近感を抱いていることが分かります。

2023年3月、ハンガリーはロシアによる「非友好的な国リスト」に追加されました。ハンガリーは「親ロシア」と言われますが、ロシアは「親ハンガリー」ではないようです。

今後はどうなるのでしょうか。ハンガリー政府はこれからも難しい外交のかじ取りを迫られますが、それでもロシアとの外交をストップすることはしないでしょう。しかし、これまで述べてきたように、ハンガリーにとってロシアは、エネルギー関連を除くと特に重要なビジネスパートナーという訳ではなく、一般のハンガリー人の親ロシア的な感情は非常に薄いです。エネルギー分野でも輸入元の多様化は進んでいるので、ロシアとの関係を更に改善する必要も徐々になくなってしまいます。オルバン政権の言動は誤解を招くこともありますが、ハンガリーは「親ロシア」ではなく、実は「親EU」そして「親ウクライナ」なのです。


ご質問等があれば、気軽にお問い合わせください。

ハンガリーを含める中東欧での事業拡大、市場の状況やビジネスチャンスに関する最新情報をご希望される場合は、問い合わせフォームからご相談ください。迅速に対応いたします。

「ハンガリーへの移住」や「ハンガリーでの就労」をキーワードで調べると、ハンガリーは外国人や移民に対して厳しいというニュースが目に入ってきます。ハンガリーで就労するための許可証を取得するのは本当に難しいのでしょうか。滞在許可証申請について知っておきたいことを簡単に説明いたします。


ハンガリーに日本人が入国するにはビザが必要なのか?

日本のパスポート保持者はハンガリーに行く前に事前にビザの申請をする必要はありません。

まず、日本とハンガリーはビザ免除の協定を結んでいます。日本のパスポート保持者はハンガリーに行く前に事前にビザの申請をする必要はありません。ハンガリーに入国した時点から3か月間はビザなしで旅行者としてハンガリーに滞在できます。シェンゲン域内の初めての空港でパスポートにスタンプが捺されるだけです。スタンプの日付から3か月はビザや許可証の免除期間です。
3か月間は観光やビジネスでの出張には十分ですが、3か月を超えてハンガリーに滞在する予定の方は学生ビザや就労許可証などを申請しないといけません。


ハンガリーにおける長期的滞在許可の種類とは?

ハンガリーの滞在許可証に様々な種類がありますので、ご自分の目的に合ったものを確認しましょう。

※この記事には学生ビザ、ワーキングホリデービザ、求職ビザなどは取り上げていません。


ハンガリーでの就労許可証について

90日以内の仕事やビジネスでハンガリーに滞在される方の場合は、「就労許可証」が必要になります。就労許可証にも2種類があり、どこから給与が払われるのか、雇用形態や業務内容によって許可証の種類が変わります。

就労許可証の1つは「ICT就労許可証」と呼ばれます。ICT許可は「企業内での異動」を意味しています。つまり、日本の本社が赴任する社員を本社から外さず、ハンガリーの子会社か支店で働くよう異動させた場合に当たります。申請者は日本の親会社と雇用関係にあり、転勤命令を受けているのが申請条件になっています。給与は日本の親会社から受け取ります。
ICT許可の期限は最長で3年間で、延長はできないので、滞在期間は3年間を上回らないよう注意しましょう。

但し、ICT許可が切れる前にもう1つの就労許可証、ハンガリーにある子会社と雇用契約を結ぶ「就労許可証」の申請は可能です。一方、ハンガリーにある子会社(ハンガリーで設立された法人)とも雇用関係を結ぶ場合はまた別の種類の「就労許可証」が必要です。この就労許可証の期限は最長2年間ですが、こちらはICT許可と違い、期限が切れる前に延長がOKです。
駐在員の方にご家族が同伴される場合は、ご家族には「配偶者ビザ」を取得します。


ハンガリーでの滞在許可証の申請に必要なこと

ハンガリーで滞在許可を申請するには提出しないといけない書類が多くあります。弊社の専用シートにお客様の個人情報や職務などをご記入いただくだけで、申請に必要な書類を全て用意いたします。

滞在先住所を決めていただく

申請時にハンガリーでの滞在先住所が決まっていなければなりません。つまり、申請の前にハンガリーで家探しをし、アパートの賃貸契約を結ぶ必要があります。弊社は家探しもサポートしています。

ハンガリーで滞在許可証の申請のために滞在先住所が決まっていなければなりません。

最終学歴(卒業証明書)の提出

申請書類には赴任者がどのような職務を担当するのかを記載します。日本とは少し異なり、職務に対応する学部を出ていると言うことを証明しなければなりません。このために最終学歴証明書を提出いただき、ハンガリーの国立翻訳事務所で翻訳をしてもらいます。例えば、大学の専攻は法学だったのに申請書類には工場長と記載されていると、つじつまが合わないことになります。日本では大学の専攻と異なる業務を担当するのはよくありますが、ハンガリーではかなり珍しいです。弊社ではお客様と相談して、労働局が納得してくれるような申請書を作成しています。

ハンガリーでの滞在をカバーする民間の医療保険

ハンガリーの法人と雇用契約を結ぶ駐在員は自動的にハンガリーの社会保険制度に加入可能です。日・ハンガリー社会保障協定で加入の免除を申請することもできます。ICT就労許可証の場合は、まず社会保険制度に入れないことから、前もってシェンゲン地域で全ての項目を保証する民間の保険に加入していただく必要があります。申請時に保険証券を提示します。


これぐらいのことであれば申請なんて大丈夫だ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ハンガリーの労働局や移民局は決して親切でフレンドリーな機関ではありません。ホームページは分かりにくく、予約はできず、コールセンターの電話が繋がらず、実際に移民局に行けば何時間も待たされる、挙句の果てに書類の不備を指摘された...
また一からやり直し...

ハンガリーの滞在許可証の申請プロセスは時間と労力がかなりかかってしまいます...

こうなると何度も移民局に足を運ぶこととなり、相当な時間と労力が無駄になってしまいます。未提出の書類や不備があれば、追加で書類を用意しなければならず、許可証発行までの時間がさらに伸びてしまいます。一方、必要な書類や手続きを知っていれば、移民局に行くのは1回だけで済みます。


ですので、弊社にお任せください!

弊社は駐在員の方やご家族の就労許可証・滞在許可の取得、アパート探しなどを全面サポートするだけではなく移民局に同行や移民局とのやり取りにも対応しています。手続きは我々にお任せください!
弊社では滞在許可関係以外にも運転免許証の切り替えや赴任された方のあらゆるサポートをしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ハンガリー・フォリントとは?

ハンガリーの通貨は「フォリント」(forint)と呼ばれます。「フォリント」という名前の通貨は中世のハンガリーでも、また他のヨーロッパの国でも使われた歴史があります。ハンガリーでは第二次世界大戦後の1945-1946年にハイパーインフレーション(世界で最大のインフレ、月間1016%)が発生し、1927年に通貨として採用された「ペンゴー」(pengő)はその価値を完全に失いました。「ペンゴー」に代わる通貨として1946年8月に導入されたのが「フォリント」です。フォリントの補助単位は「フィレール」(fillér)と言い、1フォリントは100フィレールに分割されます。ただ、インフレ等の影響でフィレールは1999年以降は実際には使われていません。

100兆ペンゴー紙幣(1946年6月)出典:Wikipedia

ハンガリーは2004年にEUに加盟しました。EU加盟の条件として共通通貨ユーロの導入が想定されていますが、導入の期限は定められていません。ハンガリーはEUに加盟した後もユーロを導入せず、現在もフォリントという自国通貨を持っています。ユーロ導入の計画は過去には何度もありましたが、ギリシャ債務危機などがあり、導入に関しては賛否両論があります。現政権はユーロ導入に消極的で、2023年現在は導入の目途も立っていないため、フォリントは今後も使われていくと考えられます。

2014年発行の2023年現在流通しているフォリント紙幣(500、1000、2000、5000、10,000、20,000)出典:Wikipedia

フォリントは通貨の世界では「新興国通貨」(エマージング通貨)とされており、また人口約1000万人という小規模な国であるハンガリーでしか流通していません。よって、外国の出来事の影響を受けやすく、為替レートの変動も激しいです。ユーロの取引が多いため、フォリントの為替レートは対ユーロで示されることが多いです。2023年4月現在のレートは、1ユーロ371フォリントです。


フォリントはなぜ前から安くなる傾向にあるのか?コロナの影響は?

ハンガリー中央銀行は世界的な傾向と同調し2011年から低金利政策を取り始め、2011年に7%あった金利は2016年までに段階的に0.9%まで下がりました。2016年から2020年の間の4年間、金利は一定して0.9%という低水準で保たれました。低金利も原因になり、この間は緩やかなフォリント安(2015年1ユーロ300/310フォリント台、2019年1ユーロ320/330フォリント台)が進んでいました。

財政でも需要喚起の政策(低利子ローン等)が多く、利子は低いままでフォリントの供給は増える一方でした。明言はされなかったものの、フォリント安はまるで国の意図した政策の一部のようでした。

ハンガリー経済の原動力は輸出ですので、フォリント安はプラス効果もあったと推測されます。この時期、ハンガリーの経済成長も高く、多少の物価上昇(2~3%)はありましたが、国民の実質賃金も上昇しました。ただ、2011年1月と2020年1月間でフォリントは対ユーロで23.81%で安くなりました。

2020年3月に新型コロナの危機が始まり、フォリントの為替レートもかなり変動しました。2020年3月のみでフォリントは約8%安くなりました。その後も上下に激しい変動が続き、コロナ後の物価上昇、エネルギー価格上昇、2022年のロシアによるウクライナ侵攻による不安により、2022年10月にフォリントは、1ユーロ430フォリント台まで下落しました。これは2020年1月比でさらに25.45%のフォリント安を意味しています。フォリントの下落は底がないように思われ、2022年フォリントは世界で最もレートが下がった通貨ランキングにも入りました。

フォリントの対ユーロレート2018年-2023年 出展:Portfolio.hu


激しいフォリント安に中央銀行はどう対応したのか?

2021年6月以降為替レートと反比例して、ハンガリーの金利は上がりはじめました。2020年7月の0.6%から2年後の2022年9月に13%まで基本金利が引き上げられました。ただ、2023年4月現在はオーバーナイト金利は18%で、こちらの方が金利(参考金利)として機能しています。現在は世界的にも珍しい高金利です。長い間、ハンガリー中銀の金利引き上げもフォリントの下落を止められませんでした。基本金利は2022年9月に13%で頂点につき、10月にオーバーナイト金利は18%に上がっても、フォリント安は続きました。

ハンガリー中央銀行の金利の推移 出展:Portfolio.hu

フォリントの為替レートが改善しはじめたのは、2022年12月でエネルギー価格が下がり、ヨーロッパのエネルギー危機の収束の兆しが見えた以降です。特にエネルギーに関してハンガリーは輸入に頼っており、エネルギーは外貨で購入する必要があるため、エネルギー価格が高ければ市場には大量のフォリント売りが発生します。これはフォリント安に繋がると考えます。

ヨーロッパの天然ガス価格(EUR/MWh)出典:tradingeconomics.com

2023年にエネルギー供給に関する不安が和らぎ、高金利が功を奏して、2023年1月-4月間はフォリントは対ユーロでは約7%、対ドルでは9%高くなりました。2023年前半は2022年と対照的にフォリント復活の時期だったと言えます。

今後フォリントのレートはどうなるのか。不明点も多いです。中央銀行の金融引き締めでハンガリーで各種ローンの金利が高くなっており、また国にとって国債の負担が重くなっています。高金利は全体的には経済を減速させる効果があります。そのため、政府の方から高金利を引き下げるよう中央銀行へのプレッシャーが強いです。ただ、ハンガリーの中央銀行の立場が難しく、国内のインフレ率が高いまま、世界の主要国が金利引き下げを始めない限り、利下げはフォリントの再び下落するリスクを秘めています。

G20の基本金利 出典:tradingeconomics.com

よって、世界の国々の動向、ハンガリーのインフレ率、2023年にエネルギー価格がどうなるかは重要なポイントになります。結局のところ、ハンガリーは開放経済(国内の市場が狭く、貿易に頼っているという意味で)として他国と上手に共存しなければならないのと同様に、その通貨のフォリントも世界の諸傾向に左右される運命です。


フォリントの変動はハンガリーの日系企業にどのように影響するのか

2011~2020年の間のフォリント安は緩やかで、ある意味では為替の動きは予測可能範囲にありました。このような状況では、ユーロまたは円建てで計画している日系企業にとってメリットもありました。例えば、ハンガリーの給料水準が上がっても、それはフォリント建てで、ユーロ建てでは上昇率はそれほど高くはなかったのです。またハンガリー国内のフォリント建てのサービスに対して、インフレはそれほど影響を及ぼしませんでした。一方、2020年以降のフォリントレートの変動が激しく、予測しにくい状況です。レートがどうなるか分からないのは計画を難しくし、経営のリスクともなります。長期的には安定したレートが望ましいのは日系企業のみならず、ハンガリー企業にとっても同じです。エネルギー価格の変動が落ち着いたことを考えると、フォリントレートの急激な変動は少ないと推測されます。長期的な傾向では、フォリント高よりもフォリント安の可能性のほうが高く、それはハンガリーで活動をする企業にとってメリットとなります。


出典


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EVバッテリー産業集積地として注目されるハンガリー。ハンガリーは、スズキ(1991年)とオペル(1992年)の進出で自動車産業が盛んになり、中東欧地域(CEE)で最初にeモビリティの概念を導入したことで知られています。現在、ハンガリー政府は、バッテリー製造の可能性を高めるために直接的および間接的なインセンティブを提供し、ヨーロッパで最大のEVバッテリー生産国になりつつあります。また、ハンガリーは、その専門知識、高い生産性、地理的な利便性、競争力のある生産コストを活用し、ヨーロッパで最も魅力的な自動車関連投資先のひとつに成長しています。


自動車産業のEV化によるバッテリー需要の高まり

欧州議会は「Fit for 55」パッケージのひとつとして、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止する法案を可決しました。この結果、グローバル展開している自動車メーカー各社は、EVモデルを次々と発表しました。欧州自動車工業会(ACEA)のデータ(2021年)によると、EU26カ国(マルタを除く)の2021年の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数のシェアは、ガソリン車(全体の40.0%)とディーゼル車(19.6%)は合わせると全体の約6割(ブルーゾーン)を占めたものの、登録台数はそれぞれ前年比17.8%減、31.5%減。対照的に、ハイブリッド車と電気自動車(EV)の全体に占める割合は37.6%(グリーンゾーン)と、前年から15ポイント以上上昇しました。ハイブリッド式EV(HEV)は19.6%、バッテリー式EV(BEV)は9.1%、プラグインハイブリッド車(PHEV)は8.9%で、さらにEVバッテリーの需要が高まることが予想されます。また、現在、中国は世界のリチウムイオン電池(LIB)の生産は中国がほぼ独占しており、2020年には77%を占めていたものの、近年、特にヨーロッパで多くの国がLIB生産国になりつつあり、地理的な多様化が進むとみられています。LIB生産量に占めるヨーロッパのシェアは、2020年の6%から2025年に25%に増加し、中国のシェアは65%に低下すると予測されています。

2021年の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数シェア(EU26カ国)| 出典:ACEA


ハンガリーに多くのバッテリー製造会社が進出

いち早く欧州市場に目をつけていた韓国企業、LG化学はポーランドに、サムスン、SDI、SK Innovationはハンガリーに生産拠点を設けています。さらに、正極材や電解液といったリチウムイオン電池の部材を供給する韓国メーカーも進出しており、欧州自動車メーカーへの電池供給体制が築かれています。日系企業も、GSユアサがハンガリーにリチウムイオン電池の工場を、東レがリチウムイオン電池の部材であるセパレータフィルムの工場を設立しています。


なぜ、ハンガリーではEV 関連の投資が進んでいるのか

ハンガリー経済を産業別に見ると、自動車産業のシェアが高いことが判ります。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BYD、BMW(建設中)がハンガリーで工場を設立しています。これらの会社は、ハンガリーは賃金など生産コストが低いこと、主要市場のオーストリア、ドイツ、チェコなどが近いこと、政府の補助金が得られることを理由にハンガリーに進出してきました。アウディ、メルセデスベンツは既にハンガリー工場でEVも製造しており、中国のBYDは電気バスの組立を行っています。また、建設中のBMWデブレツェン工場ではEVのみを製造する計画です。これらの工場のニーズに応えるために、EVやバッテリー関連のサプライヤーが多数進出しています。ハンガリー政府には「再工業化計画」があり、ハンガリー経済における工業の割合を増やすことを目指しています。工業の分野でも特にEV関係の投資は政府のサポートや補助金を得やすくなっています。


ハンガリーにおける大規模なバッテリー投資の紹介

ハンガリーでは複数の大規模なバッテリー工場の投資が発表されています。どの工場もハンガリー政府のサポートと補助金(Samsung SDIは約130億円)を受けています。


ハンガリーに進出した日系企業の紹介


出典


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2022年10月18日、ハンガリーのÚjhártyán市(ブダペストから南へ45キロメートル)に建設された東洋インキハンガリーの工場の開所式にご招待いただきました。東洋インキSCホールディングス代表取締役会長である北川様、トーヨーカラー代表取締役社長である岡市様をはじめ、外務貿易省State Secretaryタマーシュ・メンツェル様やÚjhártyán市長シュルツ・ヨ―ジェフ様、SK On Hungaryの代表者やその他韓国企業サプライヤー、 また、東洋インキハンガリープロジェクトの実現に多大な貢献をされた設備業者や商社の方々が出席され、ドイツから来られた日本舞踊の方が踊りを披露される素晴らしい式典でした。

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

ハンガリー進出日系企業の東洋インキ、工場開所式

Sűdy & Co.(シュディアンドカンパニー)はコンサルタント会社として、日系企業様のハンガリー進出やその他の中東欧地域への進出をサポートをさせていただいていますが、東洋インキ社のハンガリー進出に関しては、我々にコンタクトを取ってこられた時にはすでに進出先はÚjhartyán市と決められていて、さらにハンガリー法人の登録も済まされていたので、弊社としてお手伝いできることは限られていました。ただ、東洋インキハンガリーの投資プロジェクトの初期段階において、自社の従業員を採用されるまで、東洋インキハンガリーから委託を受けて色々な業者とコンタクトを取ったり、ハンガリーに関する基本的な情報を提供したり、微力ながらでも投資プロジェクトのお手伝いをできたことを非常に嬉しく思います。

ハンガリー進出サポートサービスを提供しているSűdy & Co.の取締役会長シュディ・ゾルタン博士とシニアコンサルタント原田知加

東洋インキハンガリーは、韓国のリチウムイオン電池メーカーであるSK Onのハンガリー工場にリチウムイオン電池正極材用導電カーボンナノチューブ(CNT)分散体LIOACCUM®(リオアキュム)を提供する計画ですが、そのバッテリーはフォルクスワーゲングループの電気自動車に搭載されるとのこと。現在30名の従業員を45名近くまで増やし、2026年までにさらに全世界で100億円を投資される計画とのことでした。

環境問題や資源問題、脱炭素への動きなどの流れで、電気自動車へのシフトがさら進んでいくでしょう。欧州においては成長戦略である「欧州グリーンディール」のなかで、2035年までに自動車の二酸化炭素排出量を100%削減する目標を掲げています。

今後もハンガリーや中東欧諸国にリチウムイオン電池関連のメーカーやそのサプライヤー企業が進出の計画を立てられるでしょう。これからハンガリーを中心とする中欧諸国への投資を考えておられる企業様の投資プロジェクトの実現に、弊社がささやかながらでも貢献できれば幸いです。

中欧・中東欧進出を検討しており、市場の状況や機会に関する最新情報が必要な場合は、お気軽にご相談ください。
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