ハンガリーは、何世紀にもわたる優れたワイン文化を誇る国ですが、その素晴らしさは世界中であまり知られていません。中央ヨーロッパの中心に位置するこの国は、古代ローマ時代からブドウ栽培の歴史を持ち、ワインへの情熱が根付いています。しかし、ハンガリーのワイン産業が本格的に栄え、その品質と多様性がヨーロッパ中で認められるようになったのは、中世に入ってからのことでした。
このブログシリーズでは、ハンガリーの4つの注目すべきワイン産地を紹介し、それぞれの地域に特有なワイン品種に焦点を当てて詳しく探っていきます。今回の記事ではBalaton(バラトン)ワイン産地を案内していきます。
ハンガリーのバラトン湖周辺に位置するバラトン・ワイン産地は、国内で最も歴史的に重要で美しいワイン産地のひとつです。この地域は6つのワイン産地で構成されており、ワイン作りの歴史はローマ人の時代、すなわち1世紀にさかのぼります。このワイン産地のテロワールは、中央ヨーロッパ最大の湖であるバラトン湖の影響を強く受けており、土壌は火山性土壌や玄武岩土壌のほか、黄土、赤色および褐色の森林土壌、石灰岩、パノニア砂、泥灰土などが含まれています。バラトンのワイン生産者たちは、より一層品質を重視し、新しい技術を試し、ブドウ栽培とワイン醸造の実践において持続可能性を重視しています。この革新への献身は、この地域のユニークなテロワールと相まって、バラトンのワイン産地の魅力と個性を反映した、多様で高品質なワインの生産に貢献しています。
バラトン地域は多様なテロワールとブドウ品種に恵まれており、赤・白を問わず多種多様なワインを生産することで知られています。地域特有の土壌や気候条件が、これらのブドウ品種に独自の特徴を与え、産地のワインを多様で魅力的なものにしています。
バラトンでの白ワインは重要な役割を果たし、オラスリズリング、スルケバラート、イルシャイ・オリヴェール、グリューナー・ヴェルトリーナなどの品種がこの土地で繁栄しています。
Olaszrizlingはハンガリーで最も広く栽培されています。混同されやすいですが、ドイツのホワイト・リースリングとは関係ありません。この品種からは飲みやすいものから洗練されたワインまで幅広く生産されています。このブドウは大量消費されるため、しばしば見くだされてきましたが、最近この地域のワインメーカーはワインの品質を管理し、より洗練されたワインを生産するために協力しています。オラスリズリングにはミネラルや塩気のニュアンス、熟した桃やマンダリンのようなフルーツの風味があります。
Szürkebarátの特徴は、通常の白ワインよりもはるかに深い色合いであり、紫から深い赤まで幅広い色調を示すことです。早いつぼみの芽吹きと熟成を持ち、糖分を生成することもあります。ピノ・ノワールの変異体であり、風味は、メロンやマンゴーなどの熟した熱帯フルーツのニュアンスから、ボトリティスの影響を受けた風味まで幅広いものがあります。
Irsai Olivérは国内でますます注目を浴びている最も人気なワインのひとつです。この品種は軽やかな夏のワインを生み出し、滑らかな酸味と芳香を持っています。味わいは軽やかなボディとアルコールが調和し、エルダーフラワーやスグリの爽やかな酸味が引き立ち、滑らかでフレッシュな果実味が特徴です。
Zöldvelteliniはオーストリア原産であり、同国で最も一般的ですが、ハンガリーでもバラトンを含む1500ヘクタールにも広く栽培されています。柑橘類、ライム、青りんご、そして石果の香りが特徴であり、特筆すべきは、白、黒、ピンクペッパーの際立ったスパイシーさです。この品種は高い品質で評価されており、テイスティングにおいては、時折トップクラスのシャルドネやリースリングと肩を並べることさえあります。
赤ワインの中でも、ツヴァイゲルトがバラトンのワイン産地で栽培されている著名な品種です。
Zweigeltはグリューナー・ヴェルトリーナと同じくオーストリアで最も一般的ですが、ハンガリーでも1600ヘクタールで栽培されています。風味はチェリー、サワーチェリー、プラムのような赤い果実、そしてパプリカのようなスパイシーさを表します。
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ハンガリーは、何世紀にもわたる優れたワイン文化を誇る国ですが、その素晴らしさは世界中であまり知られていません。中央ヨーロッパの中心に位置するこの国は、古代ローマ時代からブドウ栽培の歴史を持ち、ワインへの情熱が根付いています。しかし、ハンガリーのワイン産業が本格的に栄え、その品質と多様性がヨーロッパ中で認められるようになったのは、中世に入ってからのことでした。
このブログシリーズでは、ハンガリーの4つの注目すべきワイン産地を紹介し、それぞれの地域に特有なワイン品種に焦点を当てて詳しく探っていきます。第3回目の記事ではEger(エゲル)ワイン産地を案内していきます。
エゲルのワイン産地はハンガリー北部に位置し、その豊かなワイン造りの歴史と多様性で知られています。この地域のブドウ栽培は、石灰岩、火山凝灰岩、黄土などのユニークな土壌と恵まれた気候の恩恵を受けています。赤と白の両方で単一品種とブレンドワインが生産されており、この地域のブドウ栽培の多様性を示しています。
ワイン生産者たちの品質へのこだわりと、特有のテロワールがエゲルをハンガリーにおける重要なワイン産地として際立たせ、地元の人々だけでなく、世界中のワイン愛好家からも高い評価を受けています。
エゲルでは主に力強い赤ワインが有名で、代表的な品種はEgri Bikavér(エグリ・ビカベール、別名ブルズ・ブラッド)です。この赤ワインは通常、ケークフランコシュ(いわゆるブラウフレンキッシュ)を主要品種とし、Kadarka(カダルカ)、Blauburger(ブラウブルガー)など他の品種をブレンドしています。エグリ・ビカベールのワインは力強い特徴を持ち、しばしばフルーティーな香りとスパイシーなニュアンスが複雑で力強い風味を醸し出しています。
エゲルではエレガントな白ワインも生産されており、特に土着品種のLeányka(レアーニカ ※ハンガリー語で「小さな女の子」を意味する)が特徴的です。レアーニカのワインは、デリケートな花のアロマと爽やかな柑橘系の風味を持つ、軽やかで爽やかなワインとして知られています。さらに、Királyleányka(キラーイレアーニカ)、Olaszrizling(オラスリズリング、いわゆるヴェルシュリースリング)、Chardonnay(シャルドネ)など他の白ブドウ品種も栽培されており、フレッシュさとフィネスに溢れた多様な白ワインが造られています。
エグリ・ビカベールには数多くの伝説がありますが、最も有名なのはオスマン時代のエゲル城の包囲に関連するものです。城を守るドボー大尉とその仲間たちは赤ワインを飲んで勇気をもらい、攻撃者たちは彼らが牛の血を飲んでいると信じて恐れ、最終的に敗れました。ビカベールの公式レシピは1912年に確立され、ケークフランコシュ、ポルトガイザー(オポルト)、メノワール(メドック・ノワール)のブドウをブレンドして使用しています。エグリ・ビカベールにはクラシック、スペリオール、グランド・スペリオールの3種類があり、それぞれ熟成度、熟成期間、リリース日など独自の製品仕様があります。エゲルでは、約5,618ヘクタールのブドウ畑があり、この地域は、石灰岩、砂、ローム、様々な火山性土壌など多様な土壌で特徴づけられています。ワインは主にケークフランコシュをベースにしたブレンドで、果実とスパイシーなアロマが支配的です。スペリオールとグランド・スペリオールのカテゴリーは、オーク熟成による控えめな複雑さと独特のミネラリティを提供します。
この品種は、ハンガリーでは約660ヘクタールで栽培されており、ブレンドによく使用される人気のある品種です。カルパティア盆地および芳香性白ワイン品種を主成分とするエグリ・チラグのブレンドにも重要な役割を果たしています。
キラーイレアーニカは1970年代にハンガリーで公式に認可され、魅力的な単一品種ワインを生産やブレンドにも適しています。キラーイレアーニカは通常、淡いワインを生産し、新鮮で繊細な香りとブドウの花や砂糖を思わせるノートが特徴です。樽での熟成はほとんど行われません。キラーイレアーニカは単独で新鮮で軽やかなフルーティーなワインを生産し、ブレンドに魅力的な特性を提供します。一部の地域ではスパークリングベースワインの生産にも使用されています。キラーイレアーニカからの白ワインは比較的淡いレモンイエローで、原産地域によって異なります。これらのワインは通常、軽から中程度のボディで、控えめなアルコールと新鮮な酸味を持っています。若いときには柑橘類、ライム、繊細な香りが特徴で、テロワールとワイン作りのスタイルに影響を受けて、果物や繊細なスパイスの風味も示すことがあります。
オラスリズリングは主にハンガリーと隣接する国々、クロアチア(Grasevinaとして知られる)、スロバキア、チェコ共和国、ルーマニア、オーストリアで栽培されています。オーストリアでは、この品種から様々なワインスタイルが生産され、ローワーオーストリアではスパークリングベースワインが人気であり、シュタイアーマルクでは軽やかでフルーティーなワインが生産されています。一部のヴィンテージでは、ノイジードル湖近くでボトリティスの影響を受けた甘いワインも生産されています。ハンガリーでは、約3,800ヘクタールのオラスリズリングが栽培されており、さまざまなスタイルのワインの生産につかわれています。これには、軽快でシトラスのような香り、フルーティーで新鮮なワインから、本格的な白ワインでありながら油のようなテクスチャーとミネラルノート、柔らかい酸味を備えたものまで幅広いスタイルが含まれます。一般的な香りには、アーモンドの花、アーモンド、青りんご、クルミ、ヘーゼルナッツが含まれます。その中立的なキャラクターは、テロワールを素晴らしく反映する特徴と言えます。
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ハンガリーは、何世紀にもわたる優れたワイン文化を誇る国ですが、その素晴らしさは世界中であまり知られていません。中央ヨーロッパの中心に位置するこの国は、古代ローマ時代からブドウ栽培の歴史を持ち、ワインへの情熱が根付いています。しかし、ハンガリーのワイン産業が本格的に栄え、その品質と多様性がヨーロッパ中で認められるようになったのは、中世に入ってからのことでした。
このブログシリーズでは、ハンガリーの4つの注目すべきワイン産地を紹介し、それぞれの地域に特有なワイン品種に焦点を当てて詳しく探っていきます。第2回目の記事ではVillány(ヴィラーニ)ワイン産地を案内していきます。
ハンガリー南部のヴィラーニは、国内有数のワイン生産地として名高く、そのブドウ栽培の歴史は何世紀も遡ります。この地域は恵まれた微気候、多様な土壌、そしてブドウ栽培への高い熱意によって恩恵を受けています。
ワイン生産者たちの革新へのコミットメントは、この地域がブドウ栽培に提供される理想的な条件と組み合わさり、ヴィラーニをハンガリーのワイン界で重要な地位として確立させることです。ヴィラーニのワインは、一貫して際立った個性と卓越した品質を持ち、国内外で高い評価を受けています。
ヴィラーニ産地は、ボルドー品種から造られる特別な赤ワインで著名です。Cabernet sauvignon(カベルネ・ソーヴィニヨン)、Cabernet franc(カベルネ・フラン)、Merlot(メルロ)がヴィラーニのテロワールで繁栄し、深みと複雑さを備えたリッチでフルボディの赤ワインを生み出しています。この地域のフラッグシップ・ワインであるヴィラーニ・フランは、エレガントで骨格のある赤ワインを提供し、この地の実力を示しています。これらのワインは熟した果実味、ほのかなスパイス、そしてバランスの取れたタンニンを備えており、ハンガリーの赤ワイン造りの頂点を象徴しています。
ヴィラーニ産のもう一つの注目すべきワインはKékfrankos(ケークフランコシュ、いわゆるブラウフレンキッシュ)で、その多様な特性を表現する能力で知られています。ヴィラーニ・ケークフランコシュは、生き生きとした酸味、赤い果実のアロマ、そして心地よいスパイスのニュアンスが特徴で、これらは地域のテロワールの影響を反映しています。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、フランス原産の有名なブドウで、高品質で長期熟成に適したワインを生産することで知られています。この品種は、ローム土、石灰岩、火山土など、さまざまな地形に適応し、世界で最も植えられている品種で、フランス、中国、アメリカなど、さまざまな気候や土壌で栽培されており、ハンガリーでも顕著です。カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは通常、色が濃く、フルボディで、地域やヴィンテージによって味が異なります。涼しい地域やヴィンテージでは、スパイシーでハーブのような風味が特徴ですが、暖かい地域やヴィンテージでは、熟した果実の風味が現れ、ジャムや甘草のノートが可能です。ハンガリーでは、古典的なボルドーブレンドやシラーなどの品種との組み合わせなど、さまざまなワインスタイルで使用されています。
カベルネ・フランはフランス原産の古い黒ブドウ品種で、ラテン語の「carbon(炭)」から名付けられたとみられています。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなど他の黒ブドウとのブレンドによく使われますが、単一品種のワインとしても見られます。特にハンガリーのヴィラニワイン地区で重要な品質品種となっており、国際的に著名なワインライターのマイケル・ブロードベントMWによって高く評価されています。カベルネ・フランのワインは力強く豊かな味わいで、カベルネ・ソーヴィニヨンほどのタンニンや色はありませんが、黒い果実や赤い果実の味わいにスパイスのノートがあります。ヴィラーニでは、石灰岩、黄土、温暖で雨の多い気候といったこの土地のテロワールの影響を大きく受けた、森の果実の風味、ジャムのニュアンス、スパイシーで芳醇なフルボディの個性で知られています。
メルロはカベルネ・ソーヴィニヨンの近縁種で、約40カ国で栽培されています。芽吹きや開花が早く、中熟期の品種です。タンニンと酸味がカベルネ・ソーヴィニヨンより低いため、ブレンドによく使われます。寒い土壌を好むとされていますが、排水の良い条件でも栽培されます。ハンガリーでは2,100ヘクタールで栽培され、特にセーケシュフェヘールヴァール、ヴィラーニ、エゲルで多く見られます。メルロのワインは一般に深い色、高いアルコール、中程度の酸味とタンニンを持ちます。ライトからフルボディまで、ジャミーさからハーブのノートまで多彩なスタイルで作られます。繊細なスパイスとジューシーな果実味のバランス、滑らかな質感、そしてブレンドか純粋かにかかわらずテロワールを反映する個性があります。
ケークフランコシュはハンガリーで最も広く植えられている品種で、約8,000ヘクタールに及びます。ケークフランコシュから作られるワインは多用途で高品質です。ロゼやフルーティな赤ワインから、樽熟成のフルボディワインやブレンドまで、様々なスタイルを生産します。一般的に、これらのワインはイチゴ、ラズベリー、バイオレットの新鮮でフルーティな風味と、フローラルやスパイシーなノートを示します。
赤ワインに加えて、ヴィラーニは高品質のロゼワインも生産しています。ケークフランコシュ、カベルネ・フラン、メルロから造られるロゼは、フレッシュさ、酸味と果実味の見事なバランスが特徴です。はっきりとした酸味と中程度の強さのタンニンが特徴で、様々なテロワールによく適応し、樽熟成への親和性を示します。ケークフランコシュは、そのテロワールの特性を反映する能力と、カルパティア盆地の地元品種としての地位で高く評価されています。
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ハンガリーは、何世紀にもわたる優れたワイン文化を誇る国ですが、その素晴らしさは世界中であまり知られていません。中央ヨーロッパの中心に位置するこの国は、古代ローマ時代からブドウ栽培の歴史を持ち、ワインへの情熱が根付いています。しかし、ハンガリーのワイン産業が本格的に栄え、その品質と多様性がヨーロッパ中で認められるようになったのは、中世に入ってからのことでした。
このブログシリーズでは、ハンガリーの4つの注目すべきワイン産地を紹介し、それぞれの地域に特有なワイン品種に焦点を当てて詳しく探っていきます。第1回目の記事ではTokaj(トカイ)ワイン産地を案内していきます。
トカイワイン産地は、ハンガリー北東部に位置し、その歴史と名声によって世界的に知られています。特にトカイ・アスー(Tokaj Aszú)は、その品質とユニークな製法により高い評価を受けています。この地域のワイン造りの伝統は数世紀にわたり、火山性土壌、恵まれた気候、そして土着のブドウ品種がワインの個性に大きく寄与しています。
トカイでは、様々なスタイルのワインが生産されています。トカイのテロワールは、ティッサ川とボドログ川の影響を受けており、ブドウ品種の育成を促しています。
ユニークな微気候と伝統的なワイン醸造技術は、甘さ、酸味、複雑さのバランスが際立つ、類まれな甘口・辛口ワインを生産するというトカイの名声に大いに貢献しています。これらの特性は、世界中のワイン生産者や愛好家に愛されています。
トカイ・アスーは、その豊かな甘さが際立ち、生き生きとした酸味と蜂蜜、アプリコット、オレンジピール、時にはスモーキーな香りの複雑な風味とのバランスが特徴です。トカイ・アスーのワインは、1樽に使用されるアスー(貴腐ブドウ)の量に基づいて分類され、3~6プットニョシュ間で甘さのレベルと品質を示しています。プットニョシュは伝統的に、ワインの樽に加えられた貴腐ブドウ(Aszú「アスー」)の数で測定されていたが、現在は残糖のグラム数で測定されています。アスーの製造は、ブドウを腐敗させるボトリティス・シネレア(ノーブル・ロット)が適切なタイミングで発生することにかかっています。このカビはブドウを特別な変化に導き、糖分と酸度を濃縮させます。ただし、この過程は早すぎず、遅すぎず、年の適切な時期に発生する必要があります。更に、ノーブル・ロットの発展には、湿気と乾燥の急速な変化が必要です。また、温度の変動などの特定の気候要因と、水源への近さも重要です。崇高な腐敗に影響を受けたブドウは、アスー・ワインの製造のために選別され、晩秋の収穫時に収穫されます。これらのアスー・ブドウは房から分離され、その後
容器に入れられ、自身の重みによって自然に非常に甘いジュースを放出します。この貴重な液体はアスー・エッセンスとして知られています。伝統的な方法に従い、この非常に濃縮されたアスー・エッセンスは後に発酵中のワインに導入されます。
近年、顕著な人気を集めて世界中でブームしているフルミントは、ハンガリーが原産地とされています。国内で栽培される品種のうち65%がトカイ地方で育てられ、多様な種類のワインに用いられています。特にトカイ地方では、貴腐菌を利用したアスーのデザートワインにおいて、その複雑さの基盤を形成しています。このワインはコクがあり酸味が強く、クインス(バラ科の果物である花梨)、ピーチ、アプリコットの香りが特徴的です。
ハンガリー原産で、フルミントに関連するハールシュレヴェリューは、卓越したドライワインと甘口ワインの両方を産出することで知られています。主にハンガリーで栽培され、甘口アスーだけでなく、ドライワインにも重要な役割を果たします。繊細な花の香り、特にリンデンの花や栗、花蜜の香りが豊かです。石果、梨、アプリコット、高級な蜂蜜の成熟した風味を持ち、控えめな香りが特徴です。シルキーな質感、中程度のボディ、そして柔らかな酸味が調和した味わいを提供します。
「サモロドニ」という言葉は19世紀初頭から広まり、トカイワイン地域に独特に関連しています。このワインスタイルの発展は、地域特有の複雑な土壌構成、多様なブドウ品種、特定の気候条件、およびさまざまな人工的・歴史的要素によって形作られています。サモロドニは、フルーティーさと貴腐菌の影響、ハチミツ、青いクルミ、リンゴの皮、カモミールのノートが特徴です。フルボディで高アルコール度数を持ち、生き生きとした酸味とオイリーな質感があります。また、塩や石のノートがスパイスを加えることもあります。サモロドニは、選別されずに収穫されたブドウ房を処理し、蔓で貴腐した、アスーも含み製造されています。これは、少なくとも21%の天然糖分を含む搾りかすからのアルコール発酵を通じて作られた、特殊なトカイワインです。少なくとも2年間木樽で熟成され、実際のアルコール度数は12%です。
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2024年1月1日にハンガリーの滞在許可制度に大幅な変更があり、滞在許可申請の条件や許可証の種類が変わりました。新しい制度で移民局での申請手続きが開始されたのは、2024年3月1日となります。申請用紙などのフォーマットも変更になっています。
前回のブログ記事でハンガリーの滞在許可について紹介し、特に駐在員の方が必要とする「ICT許可証」と「就労許可証と滞在許可証が一体となったもの」をご説明しました。2024年1月1日に導入された新しい制度の主な特徴を紹介いたします。
大幅に変更されたのは「就労許可証と滞在許可証が一体となったもの」です。2024年1月1日以降、ハンガリーで就労を希望する外国人は「ゲストワーカー滞在許可」「EUブルーカード」「ハンガリーカード」の3種類の滞在許可が申請できます。
ICT許可証は「海外転勤」を理由に申請するもので、日系企業の方がよく利用される滞在許可です。2024年1月からの法律変更はICT許可証には影響せず、以前と同じ条件で申請が可能です。
注意点は有効期限が最長3年間であること。3年後も引き続きハンガリーで就労を希望する場合、ICT許可証の新しい申請を行っていただくか(※却下される可能性もあります)、もしくは以下に記載しております別の種類の許可証への申請が必要となります。
「ゲストワーカー滞在許可」は2024年からの新制度で導入された概念で、高度な資格を有しない者が対象で、主に工場で働く技能者が想定されています。ゲストワーカーが自分で申請するのは難しいので、派遣会社、もしくは雇用先が代理申請することが一般的です。申請の基本条件は雇用先の企業が当局に登録・認定された「認定雇用主」または「認定人材派遣会社」でなければなりません。
新法律は「ゲストワーカー」を
の3種類に定義しています。1と2の場合、雇用主は社宅などゲストワーカーが住む宿泊施設を提供する義務があります。その他注意事項は下記となります。
ゲストワーカーが就労できる職種は限定されており、およそ300職種にわたり、ゲストワーカー許可証での採用が禁止されています。人材不足が問題となっている産業の業界ではゲストワーカーとしての外国人の採用が可能です。
ゲストワーカーの国籍も限定されており、2024年現在はハンガリーが提携を結ぶ以下の15ヶ国からのみ採用が可能です。
滞在許可の期限は最長2年間で、1回限り追加で1年を延長することができます。つまり、ゲストワーカーの場合、合計で最長3年間の就労と滞在が可能です。
ゲストワーカー滞在許可では長期滞在許可への切り替え、家族の呼び寄せができないとされています。
大卒資格がなくても申請することが可能です。ゲストワーカー滞在許可の期限は最長2年間で、1回限り追加で1年を延長することができます。つまり、ゲストワーカーの場合、合計で最長3年間の就労と滞在が可能です。上記に15ヶ国以外からの採用も可能です。
雇用先の企業もワーカーに代わって滞在許可の申請をすることもできます。ゲストワーカーが自分で申請するのは難しいので、派遣会社が代理申請することが一般的です。ゲストワーカー滞在許可では長期滞在許可への切り替え、家族の呼び寄せができません。
「EUブルーカード」は大卒資格を持ち、ハンガリーで高度なスキルを要する役職に就く外国人が申請できます。申請者は希望の役職が必要とするスキルに対応する資格を持っていなければならないことが重要なポイントです。
大学の専攻で役職が限定されることは、日本ではほとんどありません。ただ、ハンガリーで就労を希望する場合、最終学歴の専攻がボトルネックになることもあります。例えば、文学部卒業者がハンガリーで経理として勤務したい場合などは、よほどの理由付けをしない限り、却下される可能性が高いです。
「EUブルーカード」の申請時には有効である労働契約書と大学卒業証明書の提示が求められます。大学卒業証明書はハンガリー語でない場合、ハンガリー国立翻訳事務所による公証翻訳を添付しなければなりません。
有効期限は最長4年です。期限が切れる30日前に延長申請をする必要があります。家族の呼び寄せが可能です。
その他「ハンガリーカード」という滞在許可証の種類がありますが、高等教育担当大臣の声明に記載された資格を有する者のみ申請できます。こちらは、基本的に日系企業様向けではありません。
2024年1月に新制度が導入され、2024年3月1日より再び滞在許可の申請ができるようになりました。申請がストップしていた2ヵ月の間、申請の再開を待っていた方々が殺到しています。これまで認められていた方法が認められなくなったり、手続き方法が変わったり、申請書記載の内容が変更になったり、許可証発行の条件は厳しくなっている印象です。移民局のシステムが非常に不安定で、オンライン申請が上手くできない日もあります。
このような状況ですが、ハンガリーに駐在員を派遣されたい企業様、ハンガリーで就労を希望される日本人のために移民局の担当者や移民局に近い弁護士とやり取りをしながら、皆様の就労許可証・滞在許可証取得が確実に取得できるよう、サポートを行っています。
滞在許可の申請についてご質問がありましたら、問い合わせフォームからご連絡ください。
スズキは軽自動車とバイクで世界的に有名で、インドなどの発展途上国を中心に大きなシェアを誇っています。海外の生産拠点はほとんどが発展途上国ですが、ヨーロッパの工場はハンガリーのみということが注目されます。
スズキはなぜハンガリーを生産拠点として選んだのでしょうか?
1980年代後半におけるソ連の弱体化および中東欧諸国における民主化の流れの中、ハンガリーは1989年、社会主義体制を廃止し、政治・経済を自由化しました。特に経済の自由化に伴い、ハンガリーという未開拓の市場に多くの外資系企業(主にアメリカ、西欧)が進出しはじめました。
ハンガリーは社会主義国家だった時、100%外国資本の企業は認められておらず、外資の資本比率は最大49%に制限されていました。現在のように誰でも簡単に企業を設立できる環境ではありませんでした。もちろん、スズキ社との交渉も極秘で行われました。
しかし、ハンガリーは社会主義圏ではあったものの、ソ連など他の社会主義国家とは異なり、1970年代から生活面ではある程度の自由がありました。政治的な自由はなかった反面、政府は国民を満足させるために福祉政策に力を入れていました。ただ、実施された福祉政策に見合った経済力がなかったため1973年以降、外国の銀行から多額のローンをすることになりました。外国の銀行のほとんどが日本の銀行でした。1980年代半ばにはハンガリーの国債の半分を日本の銀行が持っていた時期もありました。ハンガリーにとって日本は社会主義時代から重要なパートナーだったことがこの事実から窺えます。
日本企業は欧米の企業と比べ、ビジネスの決断するまでに大変時間がかかると言われています。また、リスク回避の意識も高いです。「そこまで調べるか」というまで情報を収集し、それぞれの担当のレベルで会議を重ね、慎重に決断までもっていくのが一般的です。特にリスクが伴う投資になる場合はなおさらです。
ではなぜ、スズキは自由化をして間もないハンガリーに投資を決めて、法人設立からたった1年で生産を開始できたのでしょうか。そもそもなぜハンガリーが選ばれたのでしょうか。
日本企業の中ではスズキがハンガリー進出の象徴的な存在でした。スズキは1991年にハンガリー法人「マジャールスズキ社」(「ハンガリースズキ」という意味)を設立。ブダペストから北西40kmのドナウ川沿いの町エステルゴム(Esztergom)で工場の建設に取り掛かりました。建設は順調に進み、生産は翌1992年に開始しました。マジャール・スズキ社はオペル社(当時GMグループ傘下)と並び、ハンガリー初の自動車製造企業となりました。
実は、ハンガリー政府とスズキの交渉は1985年ごろから始まっていたことがあります。スズキが初めてハンガリーに関心を示したのは1984年12月です。元々スズキに声をかけたのはハンガリーではなく、ブルガリアでした。ブルガリア政府はスズキの製造工場を誘致しようとしましたが、スズキはブルガリアでの可能性を精査した結果、ハンガリーの方が投資先として魅力的だと判断したのです。
ハンガリーでの自動車工場の設立を検討した日本企業は、スズキが初めてだった訳ではありません。ハンガリー政府は1967年にトヨタと交渉したという噂がありました。1969年には日産自動車の代表団がハンガリーを視察し、西部のジェール市の400ヘクタールの土地に工場設立を検討していました。日産の計画はソ連からの圧力で中止になりました。1994年、日産が検討した土地にアウディが工場を建設しました。
このように長い経済交流の末、自由化直後のハンガリーで日本企業による大型投資、即ちスズキ工場の設立が実現したのです。「やっと」という感覚でした。1985年にスタートし、最終的に話がまとまるまで6年ほどかかりました。その経過をみると、ハンガリーの経済自由化1989年、マジャールスズキ社設立1991年、生産開始1992年というタイムラインも納得していただけるでしょう。
スズキがハンガリーに進出した理由は何だったのでしょうか。「ハンガリー政府の視点」と「スズキ社の視点」で考察しましょう。
まず、「ハンガリー政府の視点」からすると以下の誘致理由が考えられます。
一方、スズキはなぜハンガリーを進出先として選んだのでしょうか。
スズキは安価で性能が高い車で有名で、経済的にあまり発展していないハンガリーや旧社会主義諸国はスズキにとって有望な市場に見えたでしょう。実際、スズキ工場稼働当初はハンガリーでの国内販売がほとんどでした。
ハンガリーは社会主義時代に高水準の教育制度を維持。特に製造業に特化した技術を持った人材が多くいました。社会主義時代には乗用車を生産していませんでしたが、ハンガリー製のバス「イカルス」は社会主義諸国や発展途上国でよく売れていました。バス製造で経験を積んできた熟練労働者がハンガリーに大勢おり、その人材を乗用車製造工場で採用できる見込みがありました。
上述の通り、ハンガリーはバスを製造していました。さらに、ソ連から乗用車を輸入する代わりに、1967年からかなりの種類の自動車部品をソ連の自動車産業に提供してきたので、車の部品製造会社が多くありました。最初からスズキの厳しい基準に適合するハンガリーの会社は決して多くありませんでしたが、その数はだんだんと増えていきました。
建設費用163億フォリントに対し、スズキは110億フォリントのローンを組み、そのうち91億フォリントを国際協力銀行が、11億フォリントを世界銀行が融資しました。しかも国際協力銀行の91億フォリントのローンをハンガリー中央銀行が担保しました。当時、この金額は非常に高いとの認識だったので、国会の承認が必要でした。
日本企業がハンガリーに初めて出資したのは1979年です。ハンガリーの中欧国際銀行(Central European International Bank)の設立者に日本の太陽神戸銀行と長期信用銀行が加わっていました。製造業では1984、古河電工とハンガリー企業Pannonplastによる合弁会社が初め設立されました。これらの先例はハンガリーが安全だという印象をスズキに与えたのでしょう。
当初、スズキの進出理由は、旧社会主義諸国に安い車を提供することでした。しかし、ハンガリーの立地条件は西側諸国も視野に入るのでそれも重大要素だったと考えられます。
スズキはハンガリーでの生産を始めてから、ハンガリー市場で絶大なシェアを有しています。
最も登録車両台数が多かったのは2003年。39,443台のスズキ車がハンガリーで新規登録されました。2009年~2015年は登録台数が減りましたが、新車ビターラのハンガリー生産が始まったのをきっかけに登録台は回復し出しました。その結果、2016~2022年、スズキブランドは7年連続ハンガリーでマーケットリーダーの座についています。
EUにおける自動車排気ガス規制、EV化の流れ等によって、今後EUの自動車市場は大きく変化するとされています。特にハンガリーは各自動車製造会社がEV生産拠点を持ち、EV用バッテリーメーカー大手各社も進出を果たしています。目下、スズキのEV車販売は未定ですが、2023年に総額93億フォリント(約38億円)の新規投資を発表する等ハンガリーで更なる拡大を目指す姿勢を取っています。
ハンガリーを含める中東欧での事業拡大、市場の状況やビジネスチャンスに関する最新情報をご希望される場合は、問い合わせフォームからご相談ください。
ハンガリーでビジネスを始めるにあたり、最初のステップとなるのは会社設立です。個人による起業であっても、ハンガリーに進出を計画する企業であってもこのプロセスは同じです。
会社を設立する際、先ずは目的に合った会社形態を決定する必要があります。ハンガリーには以下の主な会社形態が存在します。(個人事業主などは対象外です。)
※以下はハンガリーの会社形態を示しています。翻訳として日本のものと同じ名称を使っていますが、完全に別物となっています。
合資会社(Betéti társaság、略:Bt.)は設立に最低2名、主な責任を持つ「メインメンバー」と責任が軽い「サブメンバー」が必要で、会社の活動においてオーナーが個人として無限の責任を持っています。上の3形態の中で合資会社の設立は最も費用が低いですが、小規模会社がほとんどです。企業相手にビジネスを考えている場合は、あまりお勧めしません。また、無限責任を取ることが基本条件ですので、ハンガリーまたはEUで資産を多く持たない外国人が合資会社を設立できたとしても、移民局から滞在許可が下りないリスクがあります。
有限責任会社(Korlátolt felelősségű társaság、略:Kft.)は、会社サイズと関係なくハンガリーで最もポピュラーな会社形態です。名称の通り、会社のオーナーの責任は有限で、資本金にのみ及びます。有限責任会社の設立には資本金が最低300万フォリント(最低30%または90万フォリントは現金であること)が必要ですので、合資会社と比較してコストはかかります。
日本と違い、ハンガリーには株式会社(Részvénytársaság、略:Rt., Zrt., Nyrt.)はそれほど多くありません。ハンガリーで「株式会社」は「大企業」というイメージが強いです。株式会社の設立コストが最も高く、資本金は最低500万フォリントが条件です。株式会社には株式総会と役員会という組織が必要になります。株式会社の株主の責任範囲は有限責任会社と同じく資本金に限られています。株式会社では株式の譲渡などが可能なので、株式の所有構成は変更がしやすいです。株式による配当の支払いもできます。事業内容によっては、株式会社の会社形態が義務付けられることもあります。
どちらの会社形態を選ぶにしてもハンガリーで会社を設立するには、必ずハンガリーで登録されている弁護士を通さなければなりません。個人事務所の弁護士から大きな国際的な弁護士事務まで、選択肢は色々です。大きな違いは、英語での言語対応ができるかと言うことと料金です。料金が安い弁護士はハンガリー語以外で対応できない可能性がある一方、英語対応が可能な弁護士事務所は料金が高くなります。
弁護士を決めたら、弁護士との契約を結びます。ハンガリーの法人名、会社形態、資本金、会社の事業内容、オーナーや法人の代表、会計会社や本社所在地を決めないといけません。会社設立に必要な書類の作成に当たり、幾つかの書類が求められます。例えば、会社のオーナーが日本にある親会社の場合、日本の親会社の設立証明書の正式なハンガリー語訳と外務省が発行するアポストロフィーを提出しなければなりません。
ハンガリーに駐在員がまだいない段階で会社を設立する場合は、ハンガリーに登録された住所を持つデリバリー・エージェントを任命する必要があります。デリバリー・エージェントが会社設立関係で送られる正式文書を受け取り、書類を転送します。
書類が提出されたら、だいたい1週間ぐらいで会社の仮登録が終了します。オンライン上では会社が登録されますので、会社に関するさらなる手続きに移ることができます。
法人用銀行口座として、ハンガリーで登録された銀行での口座開設が次のステップです。開設には、法人の登記簿や定款、法人代表者の署名見本、仮登録が済んでいることを示すE-aktaと呼ばれるデジタル書類が必要です。法人代表者が銀行に赴き、口座を開設します。
仮登録から約1~2ヶ月後に法人の本登録が終了します。この後にハンガリーでのビジネスを開始することができます。
会社設立の実質的な手続きは弁護士が行います。弁護士や会計事務所の選択、デリバリー・エージェント業務、銀行口座開設、オフィス物件探し、ITシステム業者、人材紹介会社探しはハンガリーのこれらのパートナー探しをサポートするような信頼できるコンサルがいると安心です。
弊社では、土地の選択や市場調査などのコンサルティング業務に加え、信頼できるパートナーの紹介や上記の業務をサポートしております。また、会社設立後に必要となる駐在員の就労許可の申請、免許切り替え、個人用銀行口座開設、アパート探しなどの駐在員やご家族向けのサービスで、皆様のハンガリーでの駐在生活をより安心したものに。
ハンガリーを含む中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。
海外への事業展開は企業にとって大きなステップです。一方、リスクを伴うことから、非常に難しい判断が迫られることがあります。特にハンガリーのように日本との関係があまり深くない市場の場合には、一層困難に直面する可能性があります。
ハンガリー市場は多くの可能性を秘めています。ただし、市場に参入してとどまることは決して容易ではありません。有益なビジネス情報は現地語でしか入手できないことが多いのです。それだけに言語、文化、コミュニケーションネットワークを理解することが重要となります。市場参入を成功させるには、現地で最新の情報を入手することが必要不可欠です。
中東欧の真ん中に位置するハンガリーは、中規模の面積(93,032 km²)を有するEU加盟国で、人口は1,000万人弱です。非ユーロ圏で、自国通貨ハンガリー・フォリントが使われています。
ハンガリーの政治体制は、1989年に社会主義から民主主義に転換しました。1990年に最初の多党選挙が行われ、自由市場経済制度が採用されました。1999年にNATO(北大西洋条約機構)、2004年にEUに加盟しました。現与党は選挙で連続4回多数議席を獲得し、長期政権を維持しています。
現在、ハンガリーの市場経済はかなり発展しています。国民1人当たりの収入はEU28カ国平均の約3分の2です。インフラは整備されており、高速道路の長さは合計1,884 kmで中欧では最長の交通網を誇っています。
主な輸出製品は、電子機器、自動車、医薬品などです。食品ではワイン、フォアグラ、鴨肉などが有名です。主な輸出先としてはドイツや他のEU加盟国が挙げられます。
政府は投資企業を積極的に支援しており、特に製造業の強化に力を入れています。現政権の最大の目的は、EUの開発資金とユニークな経済政策を活かすことによって、個人消費や経済成長を促すことです。
ハンガリー経済の原動力は自動車産業になっています。スズキ自動車、アウディ、メルセデスベンツ、BMWの大規模自動車工場が国内に4か所あります。法人税が、現在EU圏内で最も低い9%ということが背景にあるとみられます。
近年、政府の手厚い支援もあり、EV(電気自動車)用バッテリー製造関連企業の進出が目立っています(詳しくは、こちらのブログ記事をご参照ください)。バッテリー関連では特に韓国企業と中国企業の数が急増していますが、日系のバッテリーサプライヤーも複数社がハンガリーを生産拠点としています。ハンガリーのアウディ、メルセデスベンツ、BMWの自動車工場のでもEVの製造が予定されています。今後、ハンガリーはヨーロッパのEV産業の中心になると想定されています。
ハンガリーは近年、EUとの関係が緊迫し、その独特な外交政策のためEUの中の「異端児」とみられています。EUから離脱するのではないかと懸念されることもあります。しかし、ハンガリー経済はEUの経済と密接に関係していることを考えるとEU離脱が非現実的なのは明らかです。
課題としては、少子化や人材の海外流出による労働力不足、輸出への依存、ロシア産エネルギーへの依存、EUとの政治的亀裂が挙げられます。
ハンガリーでは、体制転換直後から日系企業が進出しています。最初の大型投資は1991年のスズキ自動車で、それに続き2000年代前半まで同社のサプライヤーなど多くの日系企業がハンガリーに進出しました。現在ハンガリーでは、182社の日系企業が活動しており、うち54社が製造業です。(出典:海外進出日系企業拠点数調査)
ハンガリーの代表的な日系企業は下記です。
ハンガリーには現在1,975名(出典:2022年海外在留邦人数調査統計)の日本人が在留しています。日本人向けのインフラが整っており、首都ブダペストにジェトロ(日本貿易振興機構)の事務所、国際交流基金の文化センター、日本人学校などがあります。日本食材はスーパーマーケットやアジアショップ等で入手でき、ブダペストを中心に日本食レストランも多いです。ハンガリーには親日的な人が多く、日本語の通訳ができる現地の人材の獲得は容易です。
ブダペストの一般生活費は東京より18.5%(家賃込み)安く、特に食品、光熱費などが安価です。1人用のアパートの家賃はブダペスト中心部では約8万円、郊外では6万円程度になっています。(出典:Numbeo.com)
現地通貨は「フォリント」で、為替レートは「1 円= 約2.45 フォリント」(2023年8月現在)となっています。全国的に両替所が多く、日本円の両替にも対応しています。
日本食材 | スーパーマーケット、アジアショップなどにあり |
日本食レストラン | ブダペストを中心に多くあり |
日本人学校 | ブダペストにあり |
JETRO事務所 | ブダペストにあり |
国際交流基金文化センター | ブダペストにあり |
滞在日本人数 | 1,975人(2022年現在) |
生活費(ブダペスト) | (東京より)18.5%(家賃込み)安い |
シュディアンドカンパニーは、御社のハンガリー進出またはハンガリー市場参入を成功させるための市場調査サービスを提供しております。ハンガリーのような日本から離れた国への進出は大きなリスクを伴いますが、初期段階から必要な情報が揃っていればリスクを最小限に抑えることができます。
弊社は複数のハンガリー現地企業や業界専門家と提携し、必要となるあらゆる情報を取得することができます。また、日本企業のハンガリー進出に関して豊富な実績があります。
市場調査サービスにおいて下記のような情報を提供することができます。
ハンガリーを含む中東欧諸国での事業拡大を検討し、市場やビジネスチャンスに関する最新情報が必要な場合は、問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。迅速に対応いたします。
2022年2月24日早朝、ロシア軍はウクライナに攻め込み、ヨーロッパはユーゴスラビア紛争以来20年以上ぶり戦火に見舞われることになりました。戦闘は今も止んでいません。侵攻直後、国連やほとんどの先進国がロシアの戦争行為を厳しく非難し、ロシアへの対抗手段を取り出しました。EUは特にウクライナを支持するスタンスを取りました。にもかかわらずEUの一員であるハンガリーは他加盟国と違い、ウクライナに対する支持にはあまり積極的ではありませんでした。逆に、ウクライナへの軍事支援を拒否したり、制裁の邪魔をしたりすることで注目され、西側メディアにより早々に「親ロシア派」に分類されてしまいました。それは本当に正しい評価でしょうか。ハンガリーは本当に「親ロシア派」なのかみていきましょう。
歴史的を振り返ると、ハンガリーが親ロシア派になる理由は何一つ見つかりません。ハンガリーは1848年、オーストリアに対して独立戦争をおこしました。勝利寸前でオーストリア皇帝がロシア皇帝に援助を求め、ハンガリー独立政権はロシアの圧倒的な軍事力によって潰されました。
第二次世界大戦で、ハンガリーは枢軸国のドイツと共にソ連と戦いました。ソ連には多くのハンガリー人兵士が送り込まれ、戦死しました。後にハンガリー本土もドイツ対ソ連の戦場となり、ブダペスト包囲戦は第二次世界大戦で2番目に長い市街戦でした。戦争中はソ連軍による強奪で民間人の被害も大きかったと言われています。
そして第二次世界大戦後、ハンガリーはソ連軍に占領されたが故に社会主義ブロックに強制的に組み入れられたのです。ソ連の全面支援を受けていた共産党が他の政党を潰し、1947年の総選挙で政権を取り、ハンガリーにおける社会主義の時代が始まりました。
社会主義がもたらしたのは、貧困と自由の剝奪です。1956年のハンガリー動乱では、国民は共産党による支配に対し武装蜂起し部分的には成功しました。しかし、最終的にはソ連軍が押し寄せ、ブダペストは再度戦場と化し、自由を求める運動は容赦なく潰されました。
その後、ソ連はハンガリーに常時駐屯し続けました。1989年の体制転換時には、「ロシア人は出ていけ」がスローガンになったくらいロシアに対するイメージは悪かったのです。多党制装導入による体制転換後は、西側との関係構築を積極的に進め、ロシアとの政治・経済的関係は大きく後退しました。
前述の通り、歴史的に見るとハンガリーは少なくとも3回はロシアによってひどい目に合わされています。にもかかわらず、現在のハンガリー政府はなぜ親ロシア的な言動を示しているのか疑問に思えるでしょう。これには政治・経済的な背景があります。
先ず、この10年のオルバン政権の外交戦略を考える必要があります。「東方政策」です。
「東方政策」とは、中国・ロシア・中近東・韓国・日本、その他のアジア諸国との政治・経済関係をより緊密にする戦略です。ブダペストの主要広場である「モスクワ広場」を「セール・カルマン広場」に改名し、ソ連(捕虜問題など)や共産主義を積極的に非難していたオルバン政権からは意外な政策もみえるかもしれませんが、東方政策はロシアだけが眼中にあった訳ではありません。
「東方政策」の基本的な考えは、今後、成長する地域は西ではなく東だということです。ハンガリーは元々中央アジアから移動してきた騎馬民族が作った国なので、東の国とうまくやっていけるという昔のツラン主義(中央アジアを起源とするとされる様々な民族の民族的・文化的統一性を主張する思想で20世紀前半のハンガリーで人気が高かった)の名残のような思想性もあります。中でもロシアと中国という強大な2ヶ国との関係構築は避けられません。東側諸国ブロックの崩壊後、ハンガリーはこれらの国とほぼゼロから関係を再構築する必要があったことは留意すべきです。オルバン政権は10年程度の時間をかけてこの関係構築に力を入れて、ようやく2019年~22年あたりで結果が見え出していたのです。
そこに勃発したのがロシア・ウクライナ戦争です。10年かけてやっと結果が見え出した東方政策を全部帳消しにできるか、という悩みに直面することになりました。当初、ロシア・ウクライナ戦争は早期決着することも予想されていましたので、ハンガリー政府はなるべくロシアを刺激しない方向で様子を見ることにしたのです。
ハンガリーは、ウクライナともロシアとも特に貿易は盛んとは言えず、ハンガリー企業にとってロシア市場は存在しなくてもあまり困ることはありません。ロシア製ウォッカ以外はロシア製の商品はハンガリーの店頭には並んでいません。ただ、ある分野でのみロシアの存在は大きい。それはエネルギー分野です。
ハンガリーは国内で消費する原油と天然ガスのほとんどを、パイプラインを通してロシアから輸入しています。ロシアからのエネルギー供給が止まれば、ハンガリーはかなり困難な状況に陥ります。ロシアがエネルギーを「武器」として使った事例は過去にもいくつもありましたし、ハンガリーもその被害を被ったことがあります。常にエネルギー供給が止められるリスクがあるため、ハンガリーはロシアを意識せざるを得ない状況にあることは重要な点です。
また、ハンガリーの経済は、外国企業による製造関連の投資で成り立っている部分が大きいため、エネルギー供給が途絶えてしまうようなリスクは、ハンガリーの経済的強みを大幅に減らします。例えば、BMWの工場をハンガリーに誘致できたことを誇りに思っているオルバン政権は、ロシアからのエネルギー供給が途絶えればBMWに対して面子が潰れてしまうでしょう。従って、ハンガリー政府はエネルギー供給で問題が生じるようなリスクを取ることはできないのです。実際、戦争勃発後、ドイツ向けのパイプライン、ノード・ストリームはロシアによって止められ、そのリスクは顕在化しました。
他方ハンガリーは元々ウクライナとは難しい関係にありました。ロシア・ウクライナ戦争が始まった当時、ハンガリーとウクライナ関係はどん底でした。原因はウクライナによる言語法の施行です。ウクライナは、2014年のロシアによるクリミア併合後、同化政策の一貫として学校や役所などでウクライナ語以外の言語の使用を制限する法律を採決しました。主たる目的はロシア語を排除することでしたが、その他の少数民族の言葉であるポーランド語とハンガリー語の使用も制限されました。ウクライナ西部には数十万人のハンガリー人が住んでいます。結果的にこの人たちは母国語であるハンガリー語の使用を制限されてしまったのです。ハンガリー政府は法律採決直後から強く反発しましたが、ウクライナ政府は聞く耳を持ちませんでした。これだけでも両国間にはかなりの政治的緊張が生じたので、過去の経緯を忘れて、ロシアに侵攻されたウクライナアを「全面的支援せよ」というのはなかなか受け入れがたいところがありました。
それでもハンガリーはEU加盟国であり、EU内の空気を読んで最初の段階からウクライナを支持しました。戦争勃発直後、国境を開放し、ウクライナ人が自由に入れるようにし、ハンガリーに滞在したい人たちには一時滞在許可証を発行しました。他の国に行きたい人には無料で鉄道などの公共交通機関を使え、ハンガリーを通過することができるようにしました。
またハンガリーは、EUの石油・天然ガスの禁輸措置は免除されているとはいえ、EUのロシアに対する制裁に関する条約をすべて批准しています。軍事的な支援はしていませんが、人道的な支援は戦争勃発時から行っています。政府主導の支援のみならず自治体や民間企業も支援物資を提供してきました。ハンガリーの工場では多くのウクライナ人が働いており、その家族を呼び寄せるため企業は協力しました。
2022年末から2023年にかけて戦況はロシアにとってあまり望ましくないことがみえてきました。エネルギー価格も下がってきており、ハンガリー政府はロシアと多少距離を置くようになってきています。2022年11月には、ハンガリーの大統領がキーウを正式訪問しました。2023年8月に再び訪問する予定です。ハンガリー政府が積極的に参加していたロシア主導の「国際投資銀行」(IBB)からも2023年4月、脱退しました。エネルギーに関しては、政府は他の輸入先を開拓しようとしています。ハンガリーが、今後もロシアを信頼に値するパートナーとみなしていたら、このような行動はしないでしょう。
一般国民の意見はどうでしょう。EUは定期的に加盟各国でEurobarometerという世論調査を行っています。2023年6月の調査で、ウクライナに関する質問についてハンガリー人は次のように回答しています。
ウクライナ難民に対する人道的支援に賛成86%▽ウクライナに対する経済的な支援に賛成60%▽ロシアに対する制裁に賛成59%▽ウクライナの軍事的な支援に賛成44%でした。この結果をみれば、ハンガリー人の過半数はロシアよりもウクライナに親近感を抱いていることが分かります。
2023年3月、ハンガリーはロシアによる「非友好的な国リスト」に追加されました。ハンガリーは「親ロシア」と言われますが、ロシアは「親ハンガリー」ではないようです。
今後はどうなるのでしょうか。ハンガリー政府はこれからも難しい外交のかじ取りを迫られますが、それでもロシアとの外交をストップすることはしないでしょう。しかし、これまで述べてきたように、ハンガリーにとってロシアは、エネルギー関連を除くと特に重要なビジネスパートナーという訳ではなく、一般のハンガリー人の親ロシア的な感情は非常に薄いです。エネルギー分野でも輸入元の多様化は進んでいるので、ロシアとの関係を更に改善する必要も徐々になくなってしまいます。オルバン政権の言動は誤解を招くこともありますが、ハンガリーは「親ロシア」ではなく、実は「親EU」そして「親ウクライナ」なのです。
ハンガリーを含める中東欧での事業拡大、市場の状況やビジネスチャンスに関する最新情報をご希望される場合は、問い合わせフォームからご相談ください。迅速に対応いたします。